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   愛すればこそ 5最終回

 「聞いて下さい。弟が茅ケ崎から鯛を持って来てくれたのです」


「馬鹿馬鹿しい、わざわざ持って来たのか。どこでも売ってるよ。もっとましなことを言ったら?」


「釣ったのです。鯛といとよりです。釣りたての新鮮なうちにと、車で持って来たのです」


「……」


「前に話したことがあると思います。釣りが好きで茅ケ崎に住んでいます。今、弟に電話します。聞いて下さい」


 彼女はスマホをバックから取り出し、録音設定にして電話を始めた。


「圭ちゃん一昨日はありがとう。昨日は会社大丈夫だった?」


「楽勝で間に合ったよ。朝早いと空いてるね。まして逆方向だからね。いとよりどうした?」


「冷凍したの。明日天ぷらにしようと思って。それでちょっと聞きたいのだけど、一昨日行ったスーパー覚えている?」


「覚えてるよ。それがどうかしたの?」


「あたし、マフラーして行ったかしら?無いのよ」


「姉さん、ボケるには早いよ。してなかったよ。第一、車の中だよする必要ないよ。そんなこと

で電話してきたんだ?」


「ごめんね。大事なマフラーだったから。他を探してみるわ。それじゃ」


 電話を切ると彼に渡した。


「この圭一の名前が弟です。録音聞いて下さい」


 彼女はスマホをスピーカーにして再生を始めた。再生が終ると写真を見せた。


「これが鯛を釣った時の弟の写真です」


 あの若い男の写真だった。間違いない。大きな誤解をしてしまった。謝るより嬉しさが先だった。一瞬の間があいた。そして、


「ごめん。悪かった。ごめんね」


 彼女はテーブルに顔を伏せて泣き始めた。肩が小さく震えている。彼は、彼女を後ろからなだめるように抱いた。


 俺はなんて馬鹿なんだ。これほど愛した彼女を疑うなんて。俺は馬鹿だ大馬鹿だ。せつなくてせつなくてやるせない。


「どうすれば良い?どうすれば許してくれる?」


「良いの。わかってくれてありがとう」


 泣き顔に笑顔を作って言う。とても綺麗だった。また、せつなくなった。長い口付けをした。口を離すと、


「札幌に一緒に行ってくれないか」


「えっ、どう言うことですか?」


「3月から転勤なんだ。結婚して欲しい」


 彼女は一瞬唖然とした顔をしたが、


「はい、よろしくお願い致します」


 彼女は両手を顔に当てて、声を上げて泣いた。この言葉をどれ程待ち望んでいたことか。


                       終わり

次回は新作を掲載します。1月31日金曜日朝10時