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              泣き笑い

 午後6時の約束の場所に、彼女は20分も遅れている。携帯のない時代はさほど心配しなかった。電車の遅れか、乗り遅れたに違いないと思ったからだ。


 今は違う。いつでも携帯で連絡出来る。連絡の無いことは物理的なことでなく、心の変化を思うようになった。お互いが不信な状況にあるときは、さらに誤解を生む。


 今も不安材料がいくつかあった。仕事の忙しさに、他力本願になり、放っておけば時が解決すると楽天的に考えていた。


 しかし、1時間を過ぎると流石に不安になった。思い当たることがいくつもある。今だに電話もメールも無い。男は彼女のアパートを訪ねて見ることにした。


 顔の見えない電話では、言葉と心が繋がらないことがある。会って直接話をしたい。何かの誤解が生じているのかも知れない。幸いお互いの合鍵は持ち合わせている。


 君はまだ帰っていなかった。9時を過ぎたが、君はまだ帰って来ない。携帯には、今だ連絡なし。今日は一晩中待つことにした。明日のために仕事の鞄を取りに帰った。


 最近僕を避けていたような気がする。心が離れていたのだ。僕が悪い。愛しているくせに、君への全てを軽く考えていた。


 どんなに君を愛しても、君に僕への愛が無ければ、無に等しいことを悟った。


 暗然たる思いで家に着いた。世の中の全てが虚しい。


 アパートの自室に明かりが灯いている。朝点けたまま出かけたようだ。ドアが重かった。開けると君がいた。


 にっこり笑って立ち上がって来た。


「お帰りなさい!。携帯忘れたの。どこに行ってたの?遅かったわね。心配したわ。ご飯出来てるわよ。お腹空いたでしょう?」


 彼女は携帯を忘れたことを駅に着いて気付いた。取りに帰るよりそこで待った。1時間待っても貴方は来ない。うっかり気付かなかったのかも知れないと思った。


「だからね、あなたのアパートに行けば必ず帰るからと思ったの。でも西口は人が多くて探すの大変よ」


「えっ、西口?東口だよ!」


 男は驚いた。そして、二人は顔を見合わせて大声で笑った。男は東口改札、女は西口改札で待っていた。


                        完