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   出さなかった手紙

「居所が決まったら、すぐ知らせてね」


「わかった、心配しなくていいよ」


「すぐ行くから、待っているから」


「泣くなよ。すぐ連絡する」


列車はホームから滑り出した。彼女はいつまでもいつまでも手を振っていた。


 会社倒産による職探しも、九州のとある田舎ではどうにもならなかった。思い切って東京に出ることにした。


 そして、二年の月日が流れた。久しぶりの休日に、近くの公園に来た。桜花満開にして花びらは優雅にゆったり、ひらひらとあたり一面に舞い散っていた。


 忘れもしない、あの日のホームのように。男の心もあの時と同じように熱く滾ってきた。


  就職先のあてが無い訳ではなかったが、訪ねてみるには気が引けた。結局、新聞広告による飲食店での住み込みの職を得た。


 腰掛のつもりだから、連絡はしなかった。その後、二度の職を変えた。しかし、いまだに君を迎えられる程の職を得ず、連絡のタイミングを逸してしまった。


 近くのベンチから今流行の歌が流れてきた。


♪日本のどこかに私を待ってる人がいる♪


 どうしているのだろうか。元気でいるのだろうか。まだ待ってくれているだろうか。


薄情な男と恨んでいるだろう。まさか、病気でいるのでは・・・。会いたい。会いたい。


 それにしても二年の月日は、瞬く間に過ぎた。一言の近況報告でも良かったのだ。なぜ出さなかった。


 悔やんでも悔やみ切れない。思い始めると、居ても立ってもいられなくなった。


 私は間違っていた。公園内の公衆電話に駆け寄り、逸る心のままに、彼女の自宅へ電話をした。


 偶然にも出たのは彼女だった。いきなり泣き出し、始めはほとんど会話にならなかった。


 翌日、東京駅へ彼女を迎えに行った。その日から二人の生活が始まった。  


                       完