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         書きかけの手紙 

 タクシーを降りて時計を見ると、午前1時27分。人気のない通りに、タクシーの走り去る音が、やけに大きく響いた。


 空は満天の星。春とはいえ深夜は寒い。反して私の心は暖かい暖炉のようだ。ドアを開けるのが楽しみだ。どんなに喜んでくれるだろうか。


 呼吸を整えてドアを開けた。


「お帰りなさい。寒かったでしょう。お食事にします?」


 いやに沈んだ声だ。どうしたのかな?


「いや、済ませて来た。起きていたのか」


 どんなに遅くとも、起きて待っていてくれる。感謝の気持ちがそう言わせる。


「お茶をどうぞ」


 俯いたままでいる。何か言いたさそうだ。


「おい!喜べ。課長に昇進した」


 はっと顔を上げると、泣きそうな顔をして


「おめでとうございます」


 両手を顔にあて、両肩を震わせて泣いている。そんなに喜んでくれるのか。ありがとうと思いながら、ふと、テーブル横の便箋が目に付いた。


めくって見ると、


”お帰りなさい。


 心身ともに疲れました。郷里に帰ります。朝食の用意してあります。


 尚、通帳と印鑑、キャッシュカードはいつもの引き出しに入れて置きました。


 季節の変り目です。どうぞ、お身体お大事下さい・・・”


 書きかけの手紙である。一瞬意味がわからなかったが通帳と印鑑で、はっとした。


 この1年間、殆ど深夜の帰宅。外泊も多い。二人の会話も殆ど無い。多忙を極めた。そうか、誤解している。別れようと考えたのか・・・。


 胸が痛い程せつない、すまない。思わず力いっぱい抱きしめた。熱い涙が溢れて来た。


「全て誤解だよ。ごめんね。心配かけたね。辛かったね。寂しかったね。でも、君の為と頑張ったんだよ」


「僕の幸せは、君を幸せにすることだ。一生大事にするからね。ごめんね」 


                       完