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   道案内

 途方にくれた。近道のつもりが、いつの間にか元の場所。こんなことなら、迎えに来てもらえば良かった。


 駅に着いたら電話することになっていた。歩いて10分程の距離。迷うとは露ほども思わなかった。


 両手が重い。右手は大きめのハンドバック、左手にお土産の紙袋。戻るにも自信が無くなった。


「どうかされましたか?」


 私を通り過ぎ立ち止ると、不審に思ったのか学生風の青年が声をかけてくれた。


「はい。道に迷ってしまいまして・・・」


「この辺は道が入り組んでますからね。住所わかりますか?」


「小山1の38番地です、公園が近くにあります」


 青年はそれなら近くまで行きますから、ご一緒しましょうと言う。そして、紙袋を持ってくれると言う。


 恐縮で遠慮したのだが、青年は遠慮は要りませんと私の紙袋を持った。


ふと、大丈夫だろうかと思った。東京はひったくりや置き引きが横行していると聞いていたからだ。


 青年は案内しましょうと紙袋を持って並んで歩き始めた。


 ひょっとしてそのまま持って行かれたらどうしょうと、ちょっと不安になった。


 しばらく歩くと私は思い出した。この道は孫と何度か通った道だ。


「あ、わかりました。その先を左に曲がると直ぐです」


「じゃ、その角まで行きましょう」


 角を曲がると青年は、


「大丈夫ですか?間違いないですか?」


「はい、ありがとうございました」


 青年は紙袋を渡すとにっこり笑って、


「実は、僕も越してきたばかりの時は、何度か道に迷ったものです。では、さようなら」


 あっけにとられるくらい簡単に、青年は今来た道を引き返して行った。

 

 青年は私と方向違いの道を、わざわざ案内してくれたのだった。極普通のことのように。


                      完