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   41.黒電話

  物置から電話のベルの音が聞こえる。


「由香ちゃんも聞こえた?時々鳴るのよ」


「出ないんですか?」


「使っていない電話なの。気味が悪いのよ」


「それは気味が悪いですね。でも物置に電話ですか?」


「由香ちゃんは入ったばかりだから知らないわね。以前は事務所だったらしいの」


「あんな狭いところが事務所ですか?」


 そこは2坪ほどの狭い部屋で黒電話が部屋の隅にぽつんと置いてあった。


「昔はクラブだったから、事務所として使ってたらしいの」


「道理でお店が、カラオケスナックとしては大きいと思ってました」


「気味が悪くてオーナーに話したら。気にしなくて良いって言うのよ」


「どう言うことですか?」


「この電話はクラブ純子で1053ジュンコサンとなるの。オーナーの名前よ。番号を無くすことはお店を無くすことになるので残してあるそうよ」


 4年前になる。純子は石原が海外転勤と聞いて、目の前が真っ暗になった。


 クラブは勿論、全てにやる気を無くした。恋愛は商売のはずだった。しかし、いつしか客の石原を愛していた。


 石原には妻子がいた。役員として海外転勤である。妻子は学校を理由に日本に残った。彼は単身で赴任した。


 純子は何度も現地に誘われた。しかし、クラブは1日も休めない。断り続けた。そしていつしか音信不通になった。


 その後、景気の冷え込みからクラブは経営不振に陥りカラオケスナックに変えた。


 石原にも変化があった。海外支社は業績不振で閉鎖になり帰国した。帰国後予定されていたポジションは無かった。それどころか退社を余儀なくされた。


 石原に嫌気した妻には、子供が就職すると私達の役目は終わりましたと離婚された。


 拠り所の無い石原は、無性に純子に会いたくなった。何度も電話したが誰も出ない。心配になって店を訪れた。


 話を聞いた由香は、只事でない男の雰囲気にオーナーに連絡した。


「直ぐこちらへ来るそうです。そちらへお座り下さい」


 20分程で純子は来た。石原を見て絶句した。やつれ気味で痩せていた。それでも石原は優しくにっこり笑って、


「元気だった?」


 その一言に、会えなかった4年間の堪えて来た心が堰を切って震えた。涙が溢れた。せつなくて悲しかった。


 純子は従業員の前にも構わず、声を上げて泣き崩れた。


二人はこの日から一緒に住み始めた。


                       終わり

次回は2月8日金曜日に掲載します