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                   36、婚儀 2

 おちかのことが頭に浮かんでいた。この期に及んでもと情けなかった。おちかは人の妻だ。これで良いのだ。


 俊介は長屋を引っ越すことを決めた。全てを忘れよう。


「俊介さん、座ってくれ」


 俊介が座ると、市之進はすぐにその前に両手を付いた。改まった口調で、


「俊介さん美乃をよろしくお願いします」


 俊介も即座に座り直し、


「こちらこそよろしくお願い致します」


 互いに顔を上げると、


「ありがとう、よろしく頼みます。さ、飲み直そう」


 俊介はまだこだわりがあるのか、居たたまれない気持ちでいた。


「いえ、もうたくさんいただきました。今日はこれで失礼します。ただ、明日のことですが……」


「明日は休んで、ゆっくり身体を休めてくれ」


「よろしいですか?」


「当たり前だ。7日の長旅だ。ゆっくり休んでくれ。明後日は元気な顔を見せてくれ」


「ありがとうございます。それではお言葉に甘えましてそうさせていただきます」


 俊介は二人に送られて長屋を出た。美乃は恥ずかしそうに俯いたままでいた。


 次の朝、7つ半(5時)に目が覚めた。昨夜は旅の疲れが出た。汗まみれの身体のまま寝てしまった。


 早速、銭湯に出かけた。帰りはそのまま大家に顔を出した。そこで意外なことを聞いた。


「佐久間様、お久しぶりでございます。お家賃には2か月も早ようございますが、何かございましたか?」


 俊介もおちかと同じように、一年の前払いをしていた。


「うん、今月も持って引っ越そうと思う。どこか良いところはないかそれを聞きに来た」


「やはりそうでございましたか、長屋の皆も噂しております。寂しそうで見ていられないと、涙こぼす者までいます」


「うん?それはどう言うことだ?」


 大家はあっと言って口を片手で抑えた。


「話してくれないか、どう言うことだ」


 大家は俊介が怒ってはいないと知ると話し始めた。


「皆はおちかさんに逃げられたと噂しておりました。それで私が、わけあって郷里に帰ったんだと話しました」


「そうか、逃げられたと言って間違いない。それで妻を娶ることにした。新たな出発をしたい。どこか良い部屋はないか?」


「手回しが良うございますが、本当ですか?」


「そうだ4日後の月末に婚儀をする」


「わかりました。お任せ下さい。私が同じく大家を致しております。ここから2町(218m)程先です。ちょっと大きめで6畳の長屋です」


「すまないが、見せてくれないか?」


 その部屋は長屋の一番奥で角部屋であった。先月まで大工の若夫婦が住んでいた。俊介はその場で決めた。


 治療所へも2町程近くなる。気の早い俊介は、午前中に掃除を終え、引っ越しを済ませた。


 大家に荷車を借りて2往復した。荷物は医書と布団。後は鍋等と食器ですぐ終わった。もちろん一人で行った。


 翌日、治療所で市之進と美乃に話した。あまりの速さに二人は驚いた。お手伝いさせていただきたかったと美乃は悔しそうに言う。


 市之進は安心したのだろう。嬉しそうに、


「さすがだなあ」


 と言い、美乃に顔を向けると、


「美乃、今日から俊介さんのところに行きなさい。そして、色々お手伝いをするんだよ」


「はい!」


 美乃は嬉しそうに言う。美乃は初夜を理解していなかった。


「お心はありがたいですが、4日後の婚儀を終えてからにお願い致します」


 俊介はおちかとのことがあり、曖昧にしたく無かった。きちんとした婚儀式を行い、美乃を迎えたいと思っている。


 4日後、治療所で市之進の長屋の大家と住民、そして患者とで質素だが賑やかな婚儀が行われた。新居の大家も駆け付けた。


 宵5つ(20時)にお開きとなった。俊介は市之進に挨拶をすると、美乃を連れて二人で新居へ帰って行った。


「さ、入って下さい」


 美乃は引き戸の前に、躊躇するように立っていた。俊介に背中を押されて土間に入った。


「今日から私達の家です。上がって下さい」


「はい」


 美乃は心なしか表情を硬くしていた。続くように俊介も上がり、その前に座った。


 それを待っていたかのように美乃は三つ指を付き、


「不束者ですが、末永くよろしくお願い致します」


 俊介も思わず座り直し、


「こちらこそ、よろしくお願いします」


「疲れたでしょう?お茶を入れますね。それから、その風呂敷包みはそちらに置いて下さい」


 囲い屏風の横を指さす。屏風の中は夜具が揃えてあった。


「とりあえずの着替え等を持って参りました。置かせていただきます。お茶はわたくしがお入れします」


「出来れば水が良いですね。酒の後はのどが渇きます」


「わたくしも、お水が良いです。入れて来ます」


 向かい合って二人で水を飲んだ。俊介は何だか緊張して言葉が思いつかない。


「疲れたでしょう」


 また同じことを言う。


「はい、疲れました」


「では、休みましょう。床を取ります」


「それは、わたくしが致します」


 立ち上がり屏風の後ろから布団を出した。それは一組しかなかった。美乃は自分の顔がほてるのがわかった。


 敷き終わるのを見図るように、


「じゃ寝ましょう。先に寝ます」


 俊介は左側に寝た。なぜは胸がドキドキと鼓動する。思い切って呼びかけた。


「美乃さん寝ましょう」


 その場に立ちすくんでいたが、思い切ったように帯を解き、長襦袢に腰ひも姿で俊介の隣にそっと身体を入れた。


 しばらく二人は、身体を動かすこともなくそのままじっとしていた。


 俊介はそっと美乃に顔を寄せた。美乃は気配をわかったがじっとしていた。突然口を吸われた。


 初めてのことに驚いたが、嬉しかった。いつの間にか右の乳を掴まれていた。そして吸われた。思わず声が出た。


 俊介は無言だが息遣いが荒かった。左の乳も吸われた。身体の奥がぞくっとした。腰ひもを解かれた。


 俊介が上に乗ってきた。両乳を交互に吸われた。こんなに心地良い気持ちになったのは初めてだった。


 夢心地だった。うっとりとされるままにしていた。


 その時あっと声が出た。今一番恥ずかしいところを舐められた。反射的に腰が跳ね上がった。恥ずかしくて身をよじった。


 美乃の身体の中からじゅくっと何かが湧いてきた。恥ずかしくて顔を両手で顔を覆った。身体がぶるぶる震える。


 美乃は自分の身体を抑えられない。もう身体がどうになって良いと思った。その時、何かがゆっくり入って来た。


 それは一瞬止まっていたようだったが、プチンと堰を切ったように入って来た。


 少し痛みを伴うようになったが、我慢した。これが夫婦の営みだと思った。俊介はゆっくり出し入れを始めた。


 俊介の息遣いが急に荒くなった。両腕で美乃の頭を抱きしめた。俊介はああーと大きく声を出した。


 温かいものが体の奥にバシッと当たり、それはじわっと広がっていった。


 俊介は美乃の身体から降りた。


「痛かっただろう。ごめんね」


「ううん、少しも……」


 と言いながら美乃は泣いていた。夢に描いていた。俊介と夫婦になること。それが叶った。嬉しさで胸がいっぱいになった。


 一年後、玉のような男の子が生まれた。幸せに満ちた夫婦の誕生でもあった。


(天の声)


 おちかは女の子を生んだ。二人目は男の子だったそうである。


                       終わり

 8ケ月の間、掲載の遅れ等ご迷惑をおかけいたしました。お詫び申し上げます。にもかかわらず最後までお読み下さいましたこと、心からお礼申し上げます。

 来週6月11日から新作を掲載いたします。どうぞよろしくお願い致します。