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      内緒

 「ね、来週月曜日から出張でしょう。あたし旅行に行こうかしら?」


 男は月の半分を出張で家を空けた。


「行っておいで」


「ね、どうしたの?何だか元気ないわね」


「ちょっと疲れてる」


 男は疲れているのではない。ある取引先の支払いが今月も無いのである。担当して3年になる。男の売り上げ不振の時、どれだけ協力してもらったか。神様と思ったくらいの取引先である。


 今朝、経理から相談があった。今月で3か月目である。先月先々月合わせて240万円。今月の分は115万円。社内規則では支払いの無かった時点で取引は中止することになっていた。


 男は直接集金に行った。その取引先は多額の未払い金を抱えていた。男の会社だけではなかった。他社の担当者も来ていた。他社は取引を中止していた。


 取引先は多額の未収金を一社から抱えていた。人情がらみの取引だったようだ。


 男は社長を信じた。サラ金を利用して立て替えた。しかし、今月はサラ金の限度額を超えており借りられなかった。今週中に支払いを立て替えないと取引は中止せざるを得ない。


 社長は来月10日には必ず払うと言う。


 男はなすすべが無く憔悴していた。


「ね、どうしたの?少しも食べないけど。何かあったの?」


 女は、男の様子を只事でないと見て食い下がった。


 男は重い口をやっと開き、そのことを話した。


「なーんだそんなこと!ちょっと待ってね」


 女は化粧台の引き出しから通帳と印鑑を持って来た。323万円の預金が記入されていた。


「ごめんなさい。あたし、あなたに内緒でスーパーのパートに出てたの。一人で家にいるの寂しかったの。でもね、1カ月7万ぐらいになったのよ。これ約3年分。それとね、旅行の度に貰った旅行券、換金してたの。旅行は嘘なの。どうしてもパートが休めない日だったの。少し足りないけどこれ使って」


 翌月の10日、その取引先はこれまでの分も全て支払ってくれた。さらに取引量も倍になった。


                                   完

次回35話は12月29日朝10時に掲載します