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            意地の張り合い

 すれ違うエスカレーター。ふと対向下りに視線を感じる。あっと思い一瞬見つめ合ったが、すれ違いの速さは物理的に倍となり忽ち下りの階に消えてしまった。


 日曜日の百貨店は人に溢れていた。直ぐに下りエスカレーターに乗り換え一階まで降りたが見失ってしまった。


 間違いない。君に間違いない。あたりを見回したが見当たらない。


 三年前、些細な口論で別れることになってしまった。男は今更ながら後悔した。まさか別れることになるとは思っても見なかった。


 お互いに意地を張った。男は君が折れて来るだろうと思った。いつもそうだったから。


 一日が一か月になり、一か月が一年になり、気がつけば君の消息は分からなくなっていた。全く馬鹿げたことだ。


 あの日はお互いにおかしかった。


「今まで我慢していたんだ!そんな考えの君とは一緒になれないな!」


「結構よ!私も我慢の限界よ!良い機会だわ。さようなら!」


 君は出て行った。僕は君が謝って来るのを待った。


「私が悪かったの。ごめんなさい」


 それまでの君は、必ず自分が悪かったと謝って来た。僕が悪いとわかっていることも。


 その時のにっこり笑った君の顔が、忘れられない。せつなくなった。


 人違いだったかも知れないとがっかりしていると、肩を後ろからチョンと叩かれた。


「ねっ!私探してた?」


 にっこり笑った君が後ろにいた。昔と同じお茶目な君が。


「ごめんね。僕が悪かった」


 男は心の底から謝っていた。同時に胸が締め付けられ目頭が熱くなった。


「そう?悪いと思ってるの?じゃ、お詫びに食事ご馳走して!」


 覗き込むようにして言う。昔のままの君だ。


「良いよ!何でもご馳走する」


「じゃ、お寿司がいいわ!」


「よし、行こう!近くに旨い寿司屋があるんだ」

                      

                        完