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       春が来た

 山積みにされた新しい資料。新旧入れ替えである。いつものことであるが、一束5キロ程もあり、入れ替えは大変である。


 特に上段は辛い。皆それぞれに持ち場があり、誰も手伝ってくれない。


「手伝ってあげるね」


 山岡が通りかかり、あっという間に片付いた。山岡はにっこりと笑みを残して、出かけて行った。


 山岡とは同じフロアにいるが、課が違うので口を利いたことはなかった。以来、時々言葉を交わすようになった。


 今では待ち合わせて居酒屋へ一緒に行ったりする。


 社内恋愛が禁じられているわけではないが、社内には気を遣った。


 恋愛感情など互いになかったが、二人でお酒を一緒すると、秘密を以ているようでなんとも楽しかった。


 春になり、人事異動が発表された。


 山岡は札幌支社に転勤が記載されていた。それとなく山岡から聞かされていたが、本気にしてはいなかった。


 私は釘付けされたように、何度も見入ってしまった。


「言えなかったけど、ひと月前に知らされていた」


「先週行って来たんだ。札幌はまだ冬、寒いよ。時計台がすぐ近くだよ。いつか遊びにお出でよ。案内するから」


 いつかだって、嬉しそうなこと、寂しくなるねとか色々言いようがあるでしょう。


 別に私だって、ちっとも寂しくなんかないわよ。


「もう、アパートは決めたんだ。2DKにしたんだ」


 そう言って、山岡は黙った。男の気持ちなどわかるわけないと思った。


 それがどうしたの。私には関係ないわ。鈍感なひと。女の気持ちなどわからないわね。


 山岡は急に改まった口調になった。


「札幌に来て下さい。一緒に住んで下さい」


「それって何?プロポーズ?」


「そうです。結婚して下さい」


 私は退社した。札幌に一足先に春が来た。

                                              

                      完