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  騙し続けて欲しかった 3 

「大学を卒業して入社10年目の年、会社を辞めました。理由は居づらくなったのです」


「……」


「同期入社3人の女子社員で、残っているのは私だけでした。二人は結婚を理由に退社しました」


「今時珍しいね。結婚しても福利厚生などで手厚くなっているはずだが……」


「上司には引き止められました。居づらいと思うのは私自身の心の問題でした」


「辞めたその日から心に穴が開いたようでした。辞めたのを後悔しました。職探しはする気もありませんでした」


「次の就職先を、決めてから辞めたのではなかったの?」


「普通はそうするでしょうね。でも私は大変お世話になった会社です。それは裏切り行為のようで嫌だったのです」


「君らしいね。しかし、再就職は難しかっただろう。就職先は沢山あるが、自分が望む会社は少ない」


「それが友人の紹介で決まったのです。学生時代のサークル仲間が紹介してくれたの」


「それは良かったね!」


「その友人の知り合いが輸入雑貨の会社を始めたので手伝って貰えないかと言われたのです」


「私はその会社が仙台市にあると言うことが気に入り、快諾しました。東京を離れたいと思っていましたから」


「3人の小さな会社でした。社長と男性社員と私のみです。1年目は輸入が間に合わなくなる程大変な売れ行きでした」


「私と社長は深夜まで荷造りに追われました。終電に間に合わず、やむなくホテルに泊まるようになりました」


「始めは別々のシングルに泊まっていましたが、もったいないとツインに泊まるようになりました」


「互いに愛が芽生え、いつしか私達は一緒に住むようになりました。私はこの幸せが一生続くと思いました」


「ところが翌年から商品の売れ行きが急激に落ちました。他社が類似商品を輸入し、安価で販売を始めたからです」


「社員は私だけになりました。それからも色々商品を輸入しましたが、どれも失敗でした。結局倒産しました」


「社長は私を置いて雲隠れしました。債権者に詰め寄られて知ったのですが、自宅は青森にあり妻子がいたのです」


 女は当時を思い出したのか毅然とした顔をして、男から目を逸らした。悲しみの顔は微塵もなかった。


「つらかったね。良く堪えたね。今度は僕の話を聞いてくれ」


                                つづく

次回は1月11日金曜日朝10時に掲載します