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       ちびた鉛筆

 座ろうとした机の上に、5センチ程の鉛筆が忘れられている。


ここは図書館の自習室。


 今時、珍しいちびた鉛筆だ。届けようと思ったが、届けるほどでもないと思い。机の左端に置いて資料の作成に入った。


 30分ほど経っただろうか、


「すみません、よろしいでしょうか?」


 高校生くらいの女の子だ。恐る恐る聞いて来た。私が資料の整理に夢中になっているので、悪いと思ったのだろう。


「はい、なにか?」


「あのう、その鉛筆忘れました」


「あっ、これ?貴女の鉛筆?」


「はい、どうぞ!」


 嬉しそうに受け取る。


「ありがとうございます」


「ところで、少し聞いても良い?」


「何でしょうか?」


「いつも、鉛筆を使っているの?シャープペンシルより良い?」


「いえ、両方使っています。計算するときは鉛筆に限ります。シャープペンシルだと手にしっくりこないのです」


「それと無意識に芯が折れないようにと力を加減しています。これは計算の邪魔になります。それと、これくらいの長さになると、慣れて自分の指と同じです」


「なるほど、そういうことか。来年受験?」


「はい、そうです」


「教えてくれてありがとう。頑張ってね」


「こちらこそありがとうございました」


 私は思い違いをしていた。持ち主は物を大事にする人だ。どんな人だろうと興味を持っていた。


しかし、 持ち主は賢い使い方をする女子高校生だった。何だか嬉しくなった。


 私は図書館の帰り道、鉛筆を買った。鉛筆を削るのにカッターも一緒に。鉛筆削り器は意識して止めた。それと大きめの消しゴムも。


 何だかわくわくしてきた。小学生の頃、机の端で芯をガシガシ削ったのを思い出した。私は鉛筆を使わなくなって久しい。 

                                                           完