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    今為すべきこと

 どうして、こんなことになったのだろう。バスケットの指導中、チームメンバーとの衝突で腰を痛めた。


 コーチとして招かれて三ヵ月目。治療は長期を要したが手術は現状では必要無し。コーチはおろか出社すら出来なかった。


 二か月後やっと出社した。状況は一変していた。退社を勧告された。治療費は全額会社負担。この間の給与はそのまま支給された。


 入院中、労災の適用を申し出た。電話ではあるが、担当者と口論になった。


会社は大手の電子機器メーカーである。労災は却下された。


 この日、三ヵ月の猶予を以て退社を通告された。


 治療費は今後も会社が負担するとのこと。しかし、当然だが失業保険は適用されない。今後の生活を考えると不安と悔しさで安眠出来なかった。


 その3ヵ月も今週で終わりだ。歩けないことはないが、一時間も座っていると、痛くて我慢が出来ない。車もブレーキを踏むと痺れが出て痛い。


 毎日リハビリのつもりで、朝から近くの浴場施設でぶらぶらしていた。生薬風呂には先客が一人いた。


「結構、効果ありますね」


 黙って横に入るにはと挨拶代わりに声をかけた。


「確かに利くね。どこか悪かったの?」


 五十前後の先客が問うて来た。打てば響くというか、話し易かった。いつの間にか、腰痛の経緯から現状まで話してしまった。


「問題は二つだね。現状の腹立たしさと、今後の就職先。大した問題じゃないね」


「どういうことですか?」


「今の貴方は自分と相手を責める事しか考えていない」


「まだ、三十代だと思うが、スポーツ界では素晴らしい実績を残した。だから、会社も貴方をチーム強化のために迎えた」


「試合は迫っている。コーチ不在は大問題だ。しかし、退社まで四日もある。現場に出て教えられることをとことん教えて見たらどうだろうか?」


 男は大事なことを忘れていたことに気付いた。慌てるように風呂を出て行った。 


                        完