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     聞いて良かった

 久しぶりの温泉旅行。仕事があるのでお互いに別々の到着。男は少し早く着いた。


 10分程待ったが来ないので、チェックイン手続きを先に済ませておこうと、鞄と紙袋をソファーに置いたままフロントへ向かった。


 途中で彼女の姿が見えたので、スマホで連絡した。


「あそこのソファーに鞄がある。座って待ってて」


 手続きを終えて、ソファーに戻ると、何だか険悪ムード。


「どうかした?」


「どうもしないわよ!ただ、知らない女性が寄って来て、お連れの方ですか?と聞いてきたわよ。ピンクのブラウスで素敵な人ね」


「あっ、さっき向こう側に座っていた人だ」


「良く覚えているわね」


「で、なんて答えたの」


「はい、家内ですとそのまま言ったわよ。愛人ですとでも言えば良かった?」


 男は黙った。どこかで見たような気がしたが、全く知らない人だ。


「答えられないでしょう。お生憎さま」


 夕食はバイキングで、セルフサービスである。険悪ムードが堪らなく、ビールを飲んだ。酒はここ数年止めていた。


「あら、お酒でごまかすのね。大変ね」


 その時、偶然、その女性が料理を選んでいたのが見えた。


「さっきの人よ、挨拶に行って来たら」


「関係ないよ。知らない人だよ」


「じゃ、私が挨拶してくるわね」


 近づくと、その女性が先に気付き、


「先程は失礼しました。お連れの方だったのですね」


「目の前の人が、鞄を置いたまま席を離れたでしょう。その直ぐ後、その鞄を持ち上げる人がいるからこれは大変だと思ったのです」


「あら、そうでしたの。ありがとうございました。お礼も申し上げませんで、大変失礼いたしました」


 何だそうだったの。女は可笑しくなった。 


                        完