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      25、別れ

 その言葉に愛しくなって、俊介は両手でおちかの頭を抱えるようにして頬を寄せた。おちかの頬は涙に濡れていた。


「どうした。心配事があるのだろう。話してごらん」


「いいえ、こうしていることが嬉しいのです」


 おちかは俊介の身体の下から、両手で抱きしめながら下半身を密着させた。俊介の分身は再び熱く包み込まれた。


 その包みこまれるような心地よさに、俊介の分身は再び硬度を持ち始めた。おちかにもわかった。俊介24歳若い盛り。


 俊介は口を吸う。おちかも応じた。二人で吸い合うと俊介自身は自然におちかの奥へ吸い込まれた。


 その中はうねるようにうごめいていた。それは女の本能である。子供を欲しいと願う気持ちが本能を呼び起こした。


 俊介はその心地良さにつられるように抽挿を始めた。おちかも応えるように合わせて動いた。いつものおちかとは違う。


 おちかには違う理由があった。明日は俊介と別れることになる。江戸に戻ることはない。俊介の子供が欲しかった。


 この3か月間妊娠の兆候はなかった。相手はお武家様。まして6つ年下。夫婦にはなれない。

悲しいが好都合と思った。


 今は違う。明日は別れる。前橋に帰らなければならない。俊介の子供が欲しい。何としても欲しかった。


 俊介は2回目だけに長い抽挿だった。おちかは快感に満ちて何度も気が遠のいた。突然、身体の奥に熱い飛沫を感じた。


 おちかはそれを記憶に意識を失った。こんなことは初めてである。それでも無意識に俊介を抱きしめていた。


 身ごもりたいおちかの執念だった。俊介は精魂尽き果てたかのように、ぐったりとおちかに身体を預けた。


 離れようにもおちかがしっかり絡みついている。重いだろうにと動いてみたが動けない。やむなく両手で支えた。


「お願いです。じっとしていて下さい」


 気付いたようだ。おちかはうわ言のように言った。俊介もその声を遠くで聞いた気がした。互いに快楽の極地にいた。


 二人の深い部分は絡み合ったまま喜びに満ちていた。身も心もひとつ溶け合ってそのまま眠ってしまった。


 俊介は目が覚めた。屋根のすき間から漏れた陽光が一直線に畳を照らしている。


 上半身を起こすと大きく伸びをした。爽やかな目覚めだった。隣室から小さくまな板を叩く音がする。


 おちかが朝飯を作っている。いつになく幸せな気分になった。手拭いを肩にひょいとかけ井戸端へ行った。


 井戸端には先客が二人いた。


「おはようございます」


 長屋の女房二人に口々に声をかけられた。俊介は黙って会釈した。二人は茶碗等の洗い物をしている。


 俊介が顔を洗うのを、女房達はちらちらと洗うふりして見ていた。俊介が立ち去ると、一方の女房が口を利いた。


「良い男ね。惚れ惚れするよ」


「役者絵から抜け出たみたいだよ」


「一度で良いから抱かれてみたいよ」


「あんたには無理よ。でもね、隣のおちかさんとねんごろだよ」


「へー、あのおちかさんと?」


「知らなかったの。近頃は一緒に住んでるよ。ほら見てごらん。おちかさんの部屋に入って行くよ」


「あっ、ほんとだ。いつから?」


「もう、2.3か月になるかな。良い男に良い女。妬けちゃうよ。でも日中、佐久間様はいないからわからないかもね」


 部屋に入ると、おちかは化粧をして髪もきちんと結っていた。俊介ははっと思った。綺麗だ。しかし、それは口にしなかった。


 食事も終わり。俊介は治療所へ出かけた。おちかは精一杯の笑顔で送り出した。


 俊介を送り出すと、おちかは座り込んだ。一気に力が抜けた。俊介はもういない。二度と会えない。


 両手を顔に当て、声を押さえてすすり泣いた。生きて来てこんなに辛いことはなかった。


                       つづく

次回は3月26日火曜日朝10時に掲載します