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     24、女心

 「お帰りなさい」


 いつものように渡された手ぬぐいを持って、俊介は銭湯へ出かけようとした。


 おちかの様子がいつもと何か違う。毎日の事だからわかる。妙に寂しそうな顔をしている。


「どうした?何かあっのたか?」


「いいえ、なんにもありません」


「そうか、では行って来る」


 あっさり家を出たが、湯につかると今日の色々なことが思い出されてきた。


 美乃の脈を診たこと。二人だけの昼食。全て思いがけなかった。重なるようにおちかの寂しそうな顔が浮かんだ。


 思い切ったように立ち上がり、洗い場に行くと身体をごしごしと力を入れて洗った。


 長屋に帰ると、


「お帰りなさいませ」


 二つの箱膳の横におちかが座って三つ指を付いて迎えた。


「どうしたんだ、急に改まって」


 上げた顔を見ると、おちかは化粧をしていた。今気づいたのだ。どきりとするほど綺麗だった。


「はい、天気が良いものですから富賀岡八幡宮をお参りして来ました」


「そうか、それは良かった。正月以来だね」


「本当はご一緒にお参りしたかったのですが、お願いごとをして参りました」


「ほう、何のお願いごとかな?」


「いいえ、それは内緒です。お腹空きましたでしょう。お座り下さい」


「うん、帰った時から良い匂いがしてるから腹の虫が鳴いている」


 膳の上は、俊介の好物の鯖の味噌煮とひじきの白和え、切り干し煮つけ、大根と人参のぬか漬けが並んでいた。


「お酒、お付け致しました。どうぞ」


 酒はいつも飲みたい時に自分で手酌で飲んでいた。昨日から医書を読むため止めていた。とは言え二日目である。


 迷うこともなく、膳に用意された盃を持った。鯖の味噌煮に酒がうまい。しかもおちかが酌をしてくれる。


 深酒をしては医書が読めなくなると2本で止めた。食事も終え出されたお茶をゆっくり飲んだ。幸せを感じた。


 自室へ戻り文机の前に座り医書を開いた。ほろ酔いの頭に文字は読み取れるが頭に入らない。


 大きく欠伸が出た。少し酔いを醒ましてから読もうとごろりと横になった。奥にはいつものように寝床も敷いてある。


 隣の部屋で、おちかが後片付けする音が微かに聞こえる。俊介の心に、幸せな気持ちが広がって行った。


 江戸に来て二年半になる。一人で生きて来たが、幸せな気持ちになったことは一度もない。


 この幸せな気持ちは何だろう。俊介は自問自答した。おちかがいるからだ。おちかが自分を幸せにしてくれている。


 それがわかった時、俊介は自分を恥じた。男が女に幸せにして貰っている。男が女を幸せにしなければならない。


 俊介は文机に座り直した。早く立派な医者になっておちかを幸せにする。医書を読み始めた。


 それから半刻(1時間)程して、引き戸がそっと開いた。おちかが片付けを終えて入って来た。


 音を立てぬように後ろを通り、寝床の前に座った。俊介が気付かぬはずはなかった。


「ありがとう。世話をかけるね。近々、富賀岡八幡に一緒に行こうね」


「はい」


 おちかはその優しい言葉に、堪えていた気持ちが抑えられなくなった。でもその時はもうここにはいない。


 運命が恨めしかった。声を抑えて泣いた。肩が小刻みに震えている。


 おちかは床に入らず、その場にじっと俯いて座っていた。


「疲れただろう。先に寝なさい」


 気配でわかったのだろう。後ろを振り向くと優しく言った。今までにそんなことを言われたことは無い。


 おちかは胸に詰まって返事が出来ない。黙って頷いた。涙がまた溢れてきた。明日は長屋を出て行くのだ。


「足が冷たいのだろう。今温めて上げる」


 俊介は立ち上がるとおちかの側に行った。


「さ、布団に入りなさい」


 おちかは立ち上がると帯を解いた。襦袢姿になり布団に入った。その布団の片側を持ち上げて俊介も横に入った。


 俊介が布団を持ち上げた時、おちかのおしろいに混じって甘酸っぱい匂いがした。その匂いは俊介を刺激した。


 足を温めるつもりが、襦袢をはだけさせ左胸を吸った。そして右胸を吸った。両の乳首は硬く尖った。


 昨夜は二人に交合が無かっただけに、俊介の身体はもう完全に昂まっていた。片手がおちかの秘所をまさぐった。


 あまりに急なことで、おちかの身体はまだ充分に潤っていなかった。それでもゆっくりと少しづつ入れて行った。


 最後まで入った時、おちかは俊介が急に愛おしくなり、両腕で強く抱きしめた。同時に俊介の分身も強く締め付けられた。


 俊介はその感触に刺激され、激しく抽挿を繰り返した。二人の絶頂は同時にやって来た。


 いつもなら、終わると直ぐに俊介は身体を離す。おちかがそれをさせなかった。俊介をしっかり抱きしめた。


「お願いです。このままでいて下さい」


                        つづく

次回は3月19日火曜日朝10時に掲載します