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    やきとりの串

 昼下がり、ここはスーパー店頭のやきとり屋台。この時間になると、売れ行きは悪い。客寄せに少量焼く。


 匂いと煙は食欲をそそる。焼いた分は持ち帰り用として、パックに詰める。焼く量とタイミングが難しい。


 やきとり屋は、やっと少し慣れた。脱サラ八日目。雨の日に、目の前に濡れて行く自転車のサドルに、持ち帰り用のビニールを掛けた。


 そのお礼にと、買って行く客が昨日も二人いた。やきとり屋は親切なんて気は毛頭もなかった。どうせ売れない。持ち帰り用の袋は多量に余るだろうと、少し自棄も入っていた。


「二本くれないか?食べて行く」


 見ると、お爺さんと四、五歳ぐらいの男の子。


「少し、時間いいですか?」


「そこに焼けたのがあるじゃないか?」


「いえ、焼きたてを差し上げます」


 焼きたてを食べて貰いたかった。持ち帰り用に焼き始めた串が、もう少しで焼き上がる。


「お待たせしました。どうぞ!」


 と小皿に出すと、


「ほら、食べてごらん!」


 とお爺さんは、男の子に一本渡そうとする。


 それを見たやきとり屋は、


「ちょっと、お貸し下さい」


 とはさみを出し、そのやきとりの尖った先を、ちょきんと切って渡した。お爺さんは、えっと驚き、温かい気持ちに包まれた。


 たった二本しか買わない客の、孫の心配をしてくれたのである。子供の小さな口には危険だった。


 考えれば直ぐわかることだが、それが当たり前と思っていた。尖った串先は、焼きとりを作る側の理由で、食べる側の理由ではない。


 やきとり屋も、串先を切ることを前から考えていたわけではない。小さな口を見て咄嗟に危ないと思った。素人だからこそである。


 この日から、お爺さんは孫を連れて、ほぼ毎日食べに来た、常連になった。ときには土産として十本買って行く。