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              通り雨

 今日で4日目、さっぱり売れない。


 男はこれまで婦人服メーカーの販売部長として、辣腕を振るって来た。


しかし、倒産により職を失った。周りの反対を押し切り、やきとり屋を始めることにした。


 始めは見習いとして、スーパー店頭前のやきとり屋台を担当した。売れない。


 店内には安価な焼とりが売られている。しかも、屋台のやきとりは工夫をすることが出来ない。


 味も値段も大きさも全て胴元で決められているからだ。


 最初の3日間は恥ずかしいが大声を張り上げ手も叩いた。振り向く人はあるが、努力虚しく殆ど素通り。


 昨日までの4日間平均売上本数は130本。経費を引くと利益は殆どない。しかし、逆に闘争心が沸いた。


 突然、ぱらぱらと雨が降って来た。何気なく見やった店の前。止めてある自転車に雨が降り掛かる。駐輪場に屋根は無い。


 男はふと思った。ビニールを掛けてやろう。雨では、今日も売れないだろう。持ち帰り用のビニール袋は沢山ある。


 目の前の自転車のサドルに急いで袋を掛けて回った。30数台あった。丁度掛け終わった頃から本降りになった。


 屋台は軒下で雨は当たらない。男は何だかほっとした。そして、なぜか心は爽快だった。


 しかし、売り上げは4日間で最低だった。何かが違う。何かが空回りしている。男にはそう思えた。


 次の日、やきとりがいつもより売れた。


 買う殆どの客にお礼を言われた。サドルが濡れてなくて、気持ちよく乗れましたと買って行く。


 スカートやパンツはサドルが濡れていると絡みつき気持ちが悪いと言われた。


 スーパーの店長にも礼を言われた。客から感謝の電話があったと言う。袋にはやきとりの名があった。


 この日は、今までで一番売れた。約200本。ここ数日の倍の本数。思いがけないことだった。


 明日から土日だ。人の出が多くなる。


 男は明日が楽しみになった。


 世の中が急に明るくなった気がした。男の心にも温かい灯がともった。


                       完