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    予期せぬ出来事

 駅から15分程歩いたところにあった。


 ドアを開けると真新しいスリッパが2足並んでいた。まだ内装の匂いのする新築2DKのアパートである。


 部屋には、片付けの終わらない段ボールの箱がいくつかそのままである。


「ベランダがあるんだよ。見てごらん」


 男は得意そうに案内する。ガラス戸を開けると、気持ちの良い風が入って来た。


 そこには男物の衣類が綺麗に干してあった。目の前には田園風景が広がっている。


「どう?いい部屋だろう。コーラでいい?」


 男は冷蔵庫からコーラを出してきた。立ち飲みをしながら、


「確か、君のアパートの更新は、9月だったね。後3ヶ月だよね」


 それがどうしたと言うの。


 いきなり、引っ越したから見に行こうと連れてこられ、誰のために用意してあったのか、新しい2足のスリッパ。


 誰が干してくれたのか、綺麗に並んだ洗濯物。


 私は一体何なの?週末は殆ど一緒に暮らして、月曜日にはそれぞれの会社に出勤する。


もう2年になるわ。結婚は望んでいないと言ったら嘘になるけど仕方ないわね。5つも年上だもの。


 この人の喜ぶことが大好きだった。何でもしたわ。生き甲斐だったの。楽しかったわ。夢を見たのね。


「座ってよ。良い部屋だろう?機嫌悪い?」


 にっこりと笑って聞く。私が何を考えているかなんて、わかりっこないわね。鈍感!


「ううん、そんなことないわ。良いお部屋ね。景色が素敵よ」


 私に関係ないもの、本当はどうだっていいわ。3ヶ月後は私も契約更新。どこか遠くへ引っ越そう。


 女は強気でいたが、目に涙がこみ上がって来た。


「お願いがあるんだ。ここに判を押してくれない?」


 男の名と捺印された婚姻届けが出された。


「一緒に住もう。君をきっと幸せにする」    完