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     別れは紙一重

 薄暗くなった夕暮れ。寂しさに照明を点けた。


喉 が渇く。ベッドから起き上がると、冷蔵庫の少し気の抜けたコーラを飲む。


 男は出て行った。ほんの些細な言葉のやり取りからだった。


「結局、君はわがままなんだよ」


「違うわよ!貴方に思いやりがないのよ」


「そう思うなら仕方ないな」


 男は投げやりに言う。


「その言い方いつもね。まるで私が悪いみたい!いいわ。帰ってよ」


 私は声を荒げてしまった。


 男はその言葉に憮然として、立ち上がり出て行った。


「終わったのね、いつかはこうなると思ってた。せいせいしたわ。これから、自由だわ。買い物でも行こうかしら」


 でも、なんだか気持ちがすっきりしない。


「なぜなの。なぜ終わりなの。私が何をしたって言うの。私がわがままだって?自分のこと棚に上げて、よく言うわ」


 男は電車に乗ったが、何度も降りようと思った。


一駅ごとにスマホを見る。誰からも着信は無い。いつもなら、何かに理由をつけて電話してくるのに、お知らせメールすら無い。


 諍いの理由は、男に急な仕事が入り約束を断ることになったからである。


 約束の木曜日に美術館に行けない。他の日にしてくれと言うと、女は休みを取ったからだめだと言う。


 男はふと気付いた。打ち合わせは一時からだ。遅くとも三時には終わる。


 閉館は六時だから、それからだって遅くはない。


 なぜ、その事に気が付かなかったのだろう。男は思い立つと電車を降りた。


「でも、仕事だから仕方ないのよね。あの人が悪いんじゃないわ。私言い過ぎたわ」


 女がスマホを手にしたとき、ピンポーンとドアのベル。


男は心を込めて押した。


「僕が悪かった。ごめんね。許してくれ」


                        終