Shopping Cart
Your Cart is Empty
Quantity:
Subtotal
Taxes
Shipping
Total
There was an error with PayPalClick here to try again
CelebrateThank you for your business!You should be receiving an order confirmation from Paypal shortly.Exit Shopping Cart

       思わぬ言葉

 全てが終わった。もうここには帰らない。


 私にはあの人の気持ちがわからない。別れってこんなに簡単なものかしら・・・・・。


「ただいま!」


 明るい声に、私は喜び勇んで入口へ出た。


「ねぇ、喜んで。子供が出来たって、三か月ですって」


「・・・・・・・・・・」


「ほら、見て!少し膨らんでいるみたい」


「どうして黙っているの」


「うれしくないの?喜んでくれないの」


「どうしたの?・・・」


 男は入口に立ったまま、じっと考え込んでいる。


 やっと慣れてきた土木見習い。身体から汗と土の匂いがする。今帰り着いたばかりだ。


「まだ生活出来る状態じゃない。君が一番わかっているはずじゃないか」


「私も働く。買い物の帰りに、角のスーパーに寄って来たの。明日から使ってくれるって」


 男は無言で、ひと間きりの畳に座ると黙ってしまった。


「私と一緒になるってうそだったの。私たちに子供が出来るのは困るのね」


 なぜか無性に腹が立った。そして、思わぬ言葉が出た。


「いいわ。別れてあげる」


 止めるのを振り切り、身の回りだけを持つとそのまま出てきた。


 あんなに煮え切らない人とは思わなかった。


 半年前、郷里を親の反対を押し切って出てきた。問題は山ほどある。私は事実を作るほうが良いと思った。


 私は行くあてもないが東京を離れようと思った。


 夢のような、幸せな半年の日々が蘇る。せつなくて、せつなくてたまらない。喜んでくれると思った。


 下りの列車案内の放送。急に涙がこぼれてきた。後悔が先に立ち、立ち上がろうとすると両肩をやさしく押さえられた。


「ごめんね。僕が悪かった。産んでくれ!一緒に頑張ろう!」                      

 完