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     18、切診

 おちかの胎内は熱くうねっていた。引き込むように包み込まれた。その強くうねる感触に俊介は激しく動き続けた。


 節制しようとした気持ちの反動である。俊介の身体は歓喜に満ち休むことなく律動した。それは一刻以上も続いた。


 俊介はこれまでに何度か女の経験はあった。それは欲望を満たすだけであった。それで良かった。それで満足した。


 今は違う。本能の動きと違う官能を知った。身体が女の微妙な変化に反応し、さらに固く充足し昂まり噴射した。


 翌朝、俊介は身体がだるくて起きられなかった。おちかの声が遠くに聞こえた。


「おはようございます。起きて下さい!遅くなりますよ」


 のそりと鈍い動きで立ち上がると、手桶と手拭いを渡された。頭がぼーっとして何も考えられない。


 おちかの部屋でいつものように朝飯を食べた。熱い味噌汁が喉に沁みた。食欲はなかったが無理に流し込んだ。


 昨夜はいつも以上に激しかった。お茶を飲みながら、俊介はおちかを見た。いつもと少しも変わらなかった。


「遅くなりますよ。お仕度下さい」


 俊介は道すがら反省した。あれほど強い決意をしたはずだ。しかし、足が冷たいと言われれば仕方がなかった。


 自分に言い訳をするが、情けなかった。今夜からは別々に寝ることにする。改めて強い決意をした。


「おはようございます」


 美乃がにっこり笑って声をかけて来た。治療所の前を掃いていた。


「おはようございます。今朝は寒いですね」


「今、熱いお茶をお入れします」


 美乃はほうきを入口に立てかけると俊介の後から入って行った。


 中では市之進が土鍋で薬草を煎じていた。これは俊介の提案で始めた。薬草を煎じることが出来ない者が多いからである。


 この時期は特に風邪ひきが多かった。麻黄湯を毎日作り置きをした。麻黄・桂枝・甘草・杏仁を合わせて煎じた。


 患者には3合徳利に1日分の麻黄湯を入れて渡した。温めて飲むだけで良く、大変好評だった。


 患者は治るまで徳利を持参し麻黄湯を入れて持ち帰った。腹痛薬もそうした。痛がっている患者に直ぐ飲ませた。


 この腹痛薬は大変評判になった。キハダの内皮・陳皮・干し生姜・エンレイ草・ヒキオコシ等7種を合わせた煎じ薬。


 俊介がやぶ医者と言われた理由は、この煎じ薬にあった。冷え性や食あたり等の痛みには良く効いた。


 この時代に多い便秘に効果はなかった。当然である。俊介は腹診が出来ない。痛いと聞いてこの煎じ薬を飲ませた。


 市乃進はお茶を持って来た美乃に、切診を俊介に教える手伝ってくれと頼んだ。


「美乃ここに横になってくれ。患者の来る前に、俊介さんに切診を少しづつ教える」


「俊介さん、ここに来てくれ。切診の仕方を教える」


「切診(せっしん)とは何ですか?」


「患者の身体に直接触れて診察することだ。大きく二つある。脈診と腹診。多くの人に触れることで熟達する」


「美乃、座ってないで横になりなさい。帯は解いて腰ひもだけにしなさい」


 美乃は医者の娘だけに切診の意味は分かるが、戸惑っていた。恥ずかし気に帯を解いて横になった。


「腹全体を両手で撫でるように触わる。下腹が張り硬い時は便秘だ。腹痛の4人に1人だ。同じように触ってごらん」


 美乃は目を閉じていた。俊介はためらっていたが、市之進に促され同じように触った。


 市之進と同じように胸の下から下腹に向かい撫でるように触った。温かく柔らかだった。ほのかに甘い匂いがした。


 美乃は頬をほんのり赤く染めていた。市之進は気付かぬふりをしていた。


「全体に軟らかいだろう。覚えておいてくれ。それが正常の腹だ。下腹全体に固い時は便秘だ。煎じ薬が違う」


「男は着物をはだけさせて直接触る。女性は着物の上から左手で着物を押さえ右手で触る。但し、帯は解かせる」


 俊介はぼーっとしていた。市之進の言葉が耳に入らなかった。美乃の身体の温もりが頭から離れなかった。


「明日は脈診を教える。どうした?聞いているのか」


「はい、明日もよろしくお願いします」


                       つづく

次回は2月5日火曜日朝10時に掲載します