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   エレベーターの掟

 午後1時前のエレベーターは混む。


いつの頃からか、降りる際、閉じるのボタンを押すのが当然の親切になった。もっとも、他に人が乗っていた場合のことである。


 操作ボタンの前に立った若い男は、6階で3人が降りるとき、ボタンを押したままにして、降りる人の安全を助けた。


 ところが、


「痛い!」


 ドアが閉まって、3人目の女性が挟まった。男は慌てた。


ボタンを押し間違えてしまった。


「すみません、間違えました」


 女性は後ろ向きざま睨んで降りて行った。男は親切のつもりであった。


 7階で2人降りた。男は確かめながら、開くを押した。


「ありがとう」


 年配の男は、にっこり笑いながら降りて行った。後は2人乗っている。


10階と11階のボタンが点灯している。男は10階で降りるつもり。


 10階でドアが開いた。男は閉じるのボタンを押して降りた。


 降りる際の次の人への配慮だと、先輩に教わった。これは慣れている。


「お、とっと」


 ドアを両手で押さえながら、もう一人が降りて来た。


「すみません!」


 この階で降りる人がいたのだ。又、失敗をしてしまった。


 それから、男はエレベーターに乗るときは、必ず一番奥に乗ることにした。


 まだ、1時に5分前。トイレに寄ると、同僚が歯を磨いていた。


 男はふと思った。歯磨きも?


 入社して半年。社内の掟から飲み屋の掟まで、どこにでも掟が存在する。


「帰りに、一杯やろうぜ!」


 同僚の言葉に、掟などどうでも良くなった。


 冷えた生ビールに焼き鳥が、頭にぽっかり浮かんだ。夏は生ビールだ!


                完