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  動いたバス停

 バスに乗ったと訪問先からの電話は、1時間前。バス乗車と徒歩を合わせても20分の距離。心配でバス停に迎えに来た。


 張り紙があり。祭りの道路規制により、近くの通りに場所変更と記されていた。


 女の子は降りた場所が初めて。辺りを歩いたがわからない。近くで祭りの賑わう声が聞こえる。


 いつものバス停を探してみるが、バス停はわからない。仕方なく降りた場所に戻り、途方に暮れた。


 その時、タクシーが止まり窓を開け、


「どうしたの?」


 運転手が聞いてきた。


「帰り道がわからないのです」


 と女の子は今にも泣きそう。


「やっぱりね。一時間近く通る度に立ってるから、心配になってね。家の住所はわかる?」

運転手は女の子が、孫娘と同じ位の年頃で気になっていた


「はい、ここにあります」


と胸に下げたお守り袋から取り出す。


「偉いね。見せてごらん。あ、ここから近いね。一緒に行こう。さ、乗りなさい」


 タクシーはそろそろと走り出した。


「お守りにはお母さんが入れてくれたの?」


「はい、道に迷ったら見せなさいと言われました」


 女の子は安心したのか嬉しそうに言う。


「偉いね、何年生?」


と前を見ながら聞く。


「一年生です」


 運転手は孫娘と同じだと思う。


 娘の訪問先へ、再度電話してみようと家の前に戻ると、目の前にタクシーが止まり、娘が降りてきた。


 母を見ると飛びつくようにしがみつき、堰を切ったように泣きじゃくった。


「賢い娘さんですね。住所を見せてくれました。今日はお祭りで、いつものバス停には止まりません。バス会社は、もう少し配慮があってもいいですね」


 タクシーは窓を閉め、何事もなかったように動き出した。


「ちょっとお待ち下さい!」


 代金とお礼をする間もなくタクシーは走り去った。 


                          完