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    護り屋異聞記 4.

 「ただいま!いまかえりました」


「ちゃだいま!いまかえちまちた」


「おかえりなさい。どこに行って来たの。あら、おとっあん!どうしました?」


「わしを訪ねて店まで来たんだよ。いやあーびっくりしたな。一平がお美津を連れてな」


「えっ、お店にですか?」


「そうなんだよ。びっくりしたよ。わしに会いたくて来たんだよ。ふふふ、心配してるといけないと思って連れて来た」


「静かだから、何してるんでしょうと思ってたの。まさかに、おとっあんのところに行ってるとは思いもしませんでした。行けるとは思ってませんでしたから」


「わしもびっくりしたよ。ふふふ」


 嬉しそうに顔をくしゃくしゃにして笑う。


「でも、よく道を覚えていたものですね。多分、何度も行き来しているから覚えていたのでしょうね」


「賢いのは、わしの血を引いているからだな。そうだ、それに間違いない。うん、偉い!偉い!」


 竹蔵は、一平とお美津の頭を交互に撫で始めた。


「じい!団子はいつ買ってくれるの?」


「ああ、そうだったな。今買って来るよ。待っててな。お雪、ちょっと行って来る」


「あらあら、お団子に釣られたわけね。はい、はい、行ってらっしゃい」


「なんだ、そのはいはいは。返事は一回で良い。では行って来る」


 お雪は子供にわからぬように舌をぺろりと出した。


『おとっつあんはどうしょうもないわね』


 その時、入れ違いに執事の太吉が訪ねて来た。


 お雪はどうしたのだろうと思った。夫の辺見はまだ護り屋の執務中のはずである。


「奥様、お久しゅうございます。お変わりございませんか?」


「元気ですよ。何かありましたか?」


「はい、先生は今夜4つ半(11時)を過ぎてのお帰りになるそうです。それをお伝えに参りました」


 太吉は護り屋の先代から奉公している。13歳で奉公に来て今年で丁度20歳になった。この2年で武術も学んだ。


 天賦があったのだろう。僅か2年にして剣術は辺見道場一である。護り人38人にも熟知している。


「わかりました。そこにお座りなさい。今お茶を出します」


「お心遣いありがとうございます。でも、直ぐに戻りますので結構でございます」


 太吉は言葉を伝えると帰って行った。目がきりっと光を放ち、それでいて柔らかな物言い。辺見に似て来た。


 弟子は師に似ると言うが、僅か2年でこうも変わるものか。改めて辺見の凄さを感じた。


「お伝えして参りました」


「今日は良い機会だ。お前も付いて参れ」


「はい、ありがとうございます」


 太吉は護りを実際に見るのは初めてである。胸がはかなった。


 辺見には考えがあった。札差の護りは侍にだけさせていた。今日の護りは逃げたようだ。


 この護りは先月も先々月も襲われた。相手は一人だが先月はさらに腕が立つ相手であった。


 護りは腕の立つ浪人、風間一之進であった。二度目の相手はほぼ互角。片袖を切られたが何とか追い払えた。


 今月はさらに腕の立つ相手を向けるだろうと一之進は予測した。話を聞いた辺見は護りを二人にすると約束した。


 しかし、風間一之進は臆病風に吹かれたようだ。昨夜、夜逃げをした。急遽、辺見自身が護りをすることにした。


 暮6つ(18時)辺見は太吉を伴って、札差大蔵屋を訪れた。


                     つづく

次回は11月10日火曜日朝10時に掲載します