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         護り屋異聞記 3.

 「あれ?お美津!お美津がいない!」


 一平は振り返って怪訝そうに言う。


「どうした?一緒に来たのではないのか?」


「一緒に来たんだよ。どこ行ったんだろう?」


 竹蔵はその言葉が終る前に走り出した。角を曲がるとお美津が泣きそうな顔をしてぼーっと立っていた。


 竹蔵を見るとに飛びついて来た。声を上げて泣きじゃくる。余程こわくて悲しかったのだろう。


 一平とお美津だけで蕎麦屋に来たことは初めてだった。いつもは母親お雪に連れられて来ていた。


 一平は店が近づくと嬉しくて速足になった。お美津は一生懸命後ろについて行くが、一平から遅れてしまった。


 竹蔵はお美津を抱いて店に戻った。


「お美津!どこに行っていたんだよ」


 お美津は竹蔵にしっかりしがみついて黙っていた。一平はそれでもほっとしていた。


「お美津ごめんね」


 一平は手を伸ばしてお美津の手を握った。温かい手だった。竹蔵がその手の上からぎゅっと握りしめ、


「一平、お美津と一緒の時は手をしっかり握ってなくてはだめだよ」


「うん、そうする。お美津ごめんね!」


 そこへお米が団子を二串手に持って来た。


「よく来たわね。二人で来たんだ!すごいな!偉いな!はい、どうぞ!」


 竹蔵はお美津を地面に下ろそうとするが、お美津はしがみついて降りようとしない。抱かれたまま団子を受け取った。


 一平は貰うと直ぐに食べ始めた。お美津も竹蔵に抱かれたままおいしそうに食べている。


「お米、お店大丈夫か?」


「はい、大丈夫です。ひと段落しましたから。でもすぐに戻ります」


 お米は店の中に戻って行った。竹蔵は一平とお美津が二人だけで自分を訪ねて来たことが嬉しかった。


 空は雲一つない秋晴れが広がっている。

  

 深川の街中を歩く人は少なくなった。夕7つ(16時)の鐘の音が聞こえて来た。番頭が訪問先の門を出て来た。


「鉄蔵さん、大分遅くなりましたが、次は最後の1軒になります。よろしくお願いします」


 最後の1軒は街はずれてあった。辺りは畑でその中にあった。この辺りの庄屋をしている。すぐに出て来た。


「おかげさまで無事終わりました。ありがとうございました」


 大事そうに大きな巾着袋を両手に持って言う。


「ご苦労様でしたと申し上げたいが、番頭さん、これからが一番大事な時です。お店までお護りいたします」


「そうでしたね。集金が終わってほっとしたものですから。うっかりしていました。よろしくお願いいたします」


 右側は竹藪左側は畑。道はうねるように曲がりながら続く。前の曲がりが見えた時、後ろの道は曲道で見えない。


 鉄蔵は番頭の後ろを歩きながら、妙な心騒ぎを覚えた。案の定。2人の男が藪から飛び出して来た。


 見覚えがある。今朝の男二人だ。後ろにも、だだっと足音がした。少し年嵩の男が二人。凄い形相で立っている。


 それぞれに4人は手に短刀を構えている。


「命が欲しけりゃ金を置いていけ!」


 その言葉の終わらぬうちに、鉄蔵は左手で番頭の手を引きその男に体当たりをして行った。


 いつの間に抜いたか右手の短刀で男の胸を真っすぐに突いて行く。男は咄嗟に体を右へ躱した。その隙に、


「番頭さん逃げて!」


 と言うと、くるりと向き直り両手を広げた。何事も無かったような顔をして、にこりと笑っている。


 4人は追いかけようとするが、鉄蔵のにこりと笑った顔が不気味だった。顔を見合わせた。4対1の状況である。


「やっちまえ!」


 今朝のチンピラが叫んだ。一斉に切りかかった。と見えて朝のチンピラ2人は後を追おうとした。


 瞬間、一人は地面に転がり、もう一人は腕を切られて短刀を地面に落としていた。


 それを見た後の二人は、ひるんで後ろへ下がった。戦意を無くしたどころか顔に怯えが見える。


 鉄蔵はくるりと向きを変えると番頭の後を追った。4人は追って来ない。


 街中まで歩くと、番頭に勝三が伴って走って来る。番頭が駆け寄り、


「大丈夫ですか?」


 鉄蔵の身体を見回しながら言う。つづいて勝三が、


「4人らしいな。殺めてはいないだろうな」


「はい、一人だけに腕に傷を負わせただけです」


「それなら良い。では、番頭さんと一緒にお店(たな)にご報告申し上げて来い」


「はい、わかりました」


 番頭は大変な出来事に身も心も動転していた。しかし、二人には何事も無いようなごく普通の会話であった。


                       つづく

次回は11月3日朝10時に掲載いたします

※登場人物の記載間違いがありましたこと、お詫び致します。訂正致しました。