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      誤解 1.

 12月17日。都内のアパートの一室。来年厄年42歳の男と、来年40歳の大台になる女性が電話をしている。


「ね、クリスマスイブ、どこに連れて行ってくれるの?」


「ニュース見てる?今日の都内感染者822人だよ。決め兼ねているんだよ」


「知ってる。少なくなるどころか9日から高止まりしてるわね。でもね、早く決めないと予約出来なくなっちゃうわよ」


「わかってるよ。しかし、コロナに感染したらどうする?」


「そうよね。そしたら会えなくなっちゃうわね。私、嫌だ!お願い。大丈夫なお店を捜して、お願い!」


「大丈夫な店って、何を基準に探すんだ。無理だよ。だから止めようかと思ってるんだよ」


「えっ、止めるの?私達にとって初めてのイブなのよ」


「仕方ないよ。また、来年もあるし」


「来年?嫌です。私待てません。嫌です」


 加奈子は素敵なディナーを想像していた。ワインを傾けながらイブを過ごす。樋口へのプレゼントも用意してある。


「だから、僕の家ではどうかと思っている」


「折角のイブよ。第一、いつも散らかっているじゃない。そういう雰囲気じゃないわよ」


 言い終わりながら、しまったと思った。散らかってるって口に出しちゃった。


「散らかってて悪いね。もちろん片付けるよ。君も手伝ってね」


「ほらね、いつも私が片付けているのよ。わかってるでしょう?」


「何だよその言い方。君がいつも片付けているみたいじゃないか!僕は困っているんだよ。置き場所が違っていて」


「あら、そうなの。言ってくれれば良いじゃないの。いつも綺麗になったって褒めてくれてたけどあれ嘘だったの」


「嘘じゃないけど、困ったのは確かだ」


「いいわ、私、もう片付けないから」


「ごめんね。助かっているんだ。片付けてね。そして、僕の部屋でやろう。おいしいものいっぱい買って来るよ。飛びっきりのシャンパン買ってあるんだ」


「えっ、じゃ最初から家でする気だったんじゃない。コロナがどうだとか言って。良いわよ、もう聞きたくないわ」


 スマホを切ってしまった。切った後、怒りよりも悲しくなった。素敵なレストランでの食事を想像していた。


 樋口はプレゼントを用意していた。加奈子がコートを新調したい。でも、コロナで先がわからないから我慢すると言っていたのを覚えていた。


 コートを奮発した。店で渡すには大きすぎる。樋口は加奈子にすぐ着て貰いたかった。喜ぶその姿も見たかった。


 家でイブをするわけは、加奈子には言えなかった。驚かせるつもりだったからである。


                      つづく

次回は12月25日金曜日朝10時に掲載します