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        誤解 5.

 転勤先は名古屋だった。3月1日からの異動である。


「私、会社辞めようかしら・・・」


「辞めなくて良いよ。3年もすればまた戻れる」


「えっ、3年も。私、嫌だ。絶対嫌だ!」


「仕方ないよ。サラリマンに転勤はつきものだから」


「ね、原因はコロナなんだから、ひょっとすると早く戻れるかもね」


「それはどうかな。転勤先は北海道から九州まであるんだよ」


「私、やっぱり会社辞める。私も一緒に行く」


「18年も務めたんだろう。もったいないよ。出来るだけ東京に帰るようにする」


「子供が出来たらどうするの?」


「そうだ!そうだった。君の戸籍謄本届いてたよね。婚姻届けを出しに行こう。来週どうだろう?月曜日とか?」


「わかったわ。月曜日ね。私達、法律上も夫婦になるのね。嬉しい!」


「そうだよ。良い機会だな。それから、転勤の前に休みがあるから、君のご両親に挨拶に行こう」


「それは良いの。両親とは縁が切れているの」


「何、それどう言うこと?」


「父と色々あって家に帰らないし連絡もしてないの。母からは時々連絡は来るけど私からはしない」


「どうしたの?何が原因?」


「原因は父なの。ごめんなさい。話したくないの」


「そうか、わかった。無理に聞くのは止めよう。でも君のご両親だ。僕は挨拶に行くよ」


「止めて下さい。絶対に」


「ま、良いだろう。その話は置いといて、君の退職のことだ。君の言う通り会社を辞めるんだな」


「はい、そして一緒に行きます。でも私は仕事は辞めません。向こうに行ったらパートでも何でもして働きます」


「そんなことしなくて良い。専業主婦になってくれ。そうすれば、子供が出来ても安心だ」


「そんなことしたら、私達生活に困ってしまうわ」


「大丈夫だと思うよ。君に話したことはなかったが、年収は約800万円ある。贅沢しなければ何とかなると思う」


「えっ、そんなに貰ってるの?」


「一応次長職だからね。名古屋へは部長として転勤する。だから、もう少し増えると思う」


「すごい!私、会社辞める。貴方のために尽くすわ」


「おやおや、尽くすって歌の文句じゃあるまいに、どうしてくれるって言うんだ」


「うふ、どうしたら良いのかしら?なんでも言いなりにするわ」


「ばかだな、これまでと同じで良いよ。じゃ、それで決まりだね」


「はーい!」


 加奈子は樋口に抱きついて行った。


 2月の20日に名古屋に引っ越した。22日を有休にすると4日連休となった。


 アパートは2LDKを借りた。都内の樋口の家賃とほぼ同じだった。加奈子は一週間もすると、時間を持て余した。


 樋口の帰りが毎日待ち遠しかった。樋口は歓迎会など全て中止で、定時帰宅の毎日だった。


 「今日はビーフシチュウ作ったの。ワイン飲みましょう」


「お、良いね。毎日ご馳走だね」


「だって、時間がたっぷりあるのよ。私、どこかパートへ出ようかしら?」


「ばか言うんじゃないよ。子供が出来たらどうするんだ」


「大丈夫よ。その時は辞めれば良いもの。パートってそう言うものよ」


 それから半月経ち、3月半ばである。加奈子に生理が無かった。期待して産婦人科を訪れた。妊娠を告げられた。


                      つづく

次回は1月22日金曜日朝10時に掲載します