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     覚悟の失業 7.

 池田は気持ちが急いて、カフェに30分以上前に着いた。昨夜は殆ど寝ていない。手持ちの5冊を徹底して調べた。

 珈琲を一口飲むと、手帳を開いて何度も読み返した。メモを渡せばそれだけになる。口頭で話すことにした。

「遅くなりました。お待たせしてすみません」

 清楚な水色のワンピースを着た彼女が立っている。

「僕も来たばかりです。それにまだ20分前です。飲み物は何にしますか?セルフですから僕が行って来ます」

「いえ、自分で行って来ます」

 珈琲を持って席に座ると、マスクの上からでもわかる笑顔を見せて、

「良くないんでしょう?隠さないでそのままおっしゃって下さいね」

「そんなことないですよ。珈琲でも飲みながらお話ししましょう」

 彼女はマスクを取った。改めて見る彼女は、ひときわ綺麗だ。思わずじっと見てしまった。

「やっぱり、良くないのですね?」

「いや、良いですよ。ただ、結婚すると姓が変わります。そこからはわかりません。総画29は素晴らしい画数です」

「本当ですか?今、少しも良くないのですよ。病院は退職になるし、これからのことが不安でいっぱいです」

「29画と言う画数は、無敵と言って良いでしょう。財力に恵まれ、生命運も強力です。行く所可成らざるはなしと言います」

「では、どうして良くないのですか?」

「まだ、30歳にもならないのでしょう?これからです。但し、名前の13画の影響が少しあるかも知れません」

「玲子の名前のことですか?」

「そうです。地位画と言います」

「教えて下さい。どう言うことですか?」

「女性の魅力に溢れ、男性が憧れる人気運があります。しかし、名字との組み合わせで14画。人位画と言います。孤独と不和を合わせ持っています」

「意味が良くわかりません。人気と孤独は相反するように思いますが…」

「そこです。人気は状況です。その状況に満足感がいかないのです。だから、自然に不平不満が溜まって行きます」

「それは恋愛と言うことですか?恋愛はしてません」

「いいえ、仕事も同じです。人並み以上に仕事が出来るのに認めてもらえないとか、同僚とうまくいかないとか」

 はっと思った。退社したのはワクチン接種だけの問題では無い。仕事への不満も鬱積していた。黙ってしまった。

「ごめんなさい。気を悪くさせてしまいましたね。あくまでも姓名判断ですから、お遊びです」

 池田は本に記載のまま伝えた。悪いことは言わないと決めていたのについ口が滑った。

 総画のことだけにしておけば良かった。女性は結婚すれば苗字が変わる。地位画は苗字が変われば画数も変わる。

(姓名は苗字の画数を天位、名の画数を地位、苗字の下の字と名の上の字を合わせて人位、苗字の上の字と名前の下の字を合わせて外位、全てを合わせて総位と言う)

「でも心配ないんですよ。女性は結婚すれば姓が変わりますから、気にしないで下さい」

「そうなんですね。不安に思うことは無いのですね」

「そうです。地位画が1画増えて15画になれば、真逆になります。孤独と不和が福寿円満、繁栄有徳になります」

「なんだか難しい言葉ですね。どう言う字を書くのですか?」

 池田は手帳を開いて指を差した。玲子は驚いた。見開き2ページにびっしり書き込みがされていた。

「こんなにお調べ頂いたのですか?申し訳ありません」

「いや、お綺麗な清水さんの為なら何でもしますよ」

「あら、そんな!お上手ですね。せっかくですから、ここに書いてあること全部教えて下さい。お願いします」

「わかりました。後は性格と職業です。お話します」

「どこでわかるのですか?」

「先程話した人位画で見ます。清水さんは14画ですので、10引いて4となります。この4を持つ人は表面は静かで穏やかですが、内面に激しさを秘めています」

「そんなことまでわかるのですか?」

「二面性をお持ちです。力があり人並み以上の仕事が出来ますが、内心くよくよして気苦労が絶えないと出ています」

「その通りです。こわいようです。仕事はどうなんですか?」

「努力しなくても成功すると出ています。商売、事業、芸能何でも良いようです」

「本当ですか?私、元気が出ました」

「大事なことを付け加えておきます。総数の29は女性が持つと男性的な強さが宿り家庭運に弱い面が出て来ます」

「家庭運に弱いとは、どういうことですか?」

「わかりません。そう書いてあるだけです。気にしない方が良いですよ。女性の場合、結婚すれば総数は変わります」

「そう言うことですか。でも、今この名前で生きているのですから気になります。私、母を早くに亡くしています」

「えっ、僕もそうです。僕が小学2年生の時に亡くなりました」

「私は中学生の時です。乳がんでした。辛い思い出です」

 池田はふと思った。片親を亡くした者同士は、なぜか引き合うようになると、何かの本で読んだことを思い出した。

                                       つづく

続く次回8回は8月27日金曜日朝10時に掲載します