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           覚悟の失業 5.

「おっしゃる通りです。2000年代に入って手術の方法が大きく変わりました。乳房や胸筋温存療法です」

「温存とは切除しないということですか?」

「いえ、部分的切除です。位置や癌の広がりにより決まります。当時は殆ど全切除でした」

「全切除は、肉体的美しさが奪われてしまいます。従って、すり替えは恨みによるものだと思いました」

「内容はそうなんですか?」

「そうです。これが他の病気にも行われたらと思うと怖いですね。具体的に書かれているから尚です」

「小説から社会を考えるのですね。凄いことです」

「いえ、そんな大層な事ではありません。興味本位なだけです。ですから色々テーマが変わります。今は医療です」

「医療について、他にも興味をお持ちなことがありますか?」

「はい、一番は看護婦さんです。今は看護師さんと言うんですね。看護婦さんと聞いただけで、優しい綺麗な顔が浮かびます」

「あら、ごめんなさい。失望したでしょう」

「とんでもありません。僕はひょうきんな顔をしていますが、今もどきどきしています」

「あら、素敵なお顔ですよ。一目で良い人だと思います。ひょうきんな顔とは全く違います」

 マスクを取る前は、端正な顔過ぎて警戒心が芽生える。しかし、取った時の落差に思わず笑いを堪える。

「そう言って頂くと嬉しいですが、鼻が上を向いていることは自覚しています」

 彼女はまじまじと池田を見つめた。にっこり笑って、

「そのお鼻が良いんです。良い人だと印象に残ります。初めてあった人に、私からお誘いしたのですよ」

「ありがとうございます。お茶と言われた時、嘘かと思いました」

「申し訳なくって、せめてお茶でもと思いました」

「そう言うことだったんですか、本を探すのは僕の楽しみです。まして、紹介した本です。当たり前の事です」

「いいえ、なかなか出来ることではありません」

「貴女には当たり前の事です。凄くお綺麗な人ですから誰でもそうすると思います」

「そんなお世辞を言わないで下さい。恥ずかしくなります」

 彼女は俯いた。池田は顔を合わせないから思い切って聞いた。

「失礼ですが、お名前を伺ってよろしいですか?」

「はい。私は清水と言います」

「下の名前も伺って良いですか?」

「礼子と言います。清水玲子です」

「お名前も綺麗ですね。そのままですね。僕は賢太朗と言います。池田賢太朗です」

                                              つづく

次回6回は8月13日金曜日朝10時に掲載します