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                        覚悟の失業 20

 「ただいま!」


 嬉しそうな声と共にドアを開けて入って来た。大きな声で、


「仕事決まったよ。明日から勤めることになった」


 玲子が急いで玄関脇の台所から出て来た。


「えっ、決まったのですか?」


「決まった。妻帯者は信用が違うようだ。即決だったよ」


「おめでとう!何の仕事ですか?」


「運転手だよ。工場の製品運搬。同じ鶴ヶ島。自転車で通えるよ」


「私も急いで探さなくては…」


「探さなくて良いよ。これからここに一緒に住むのだから、引っ越さなくてはならないだろう。片付けやら何やら大変だよ。だから、暫くは勤めないでよ」


「だって、生活が…」


「給料は27万だって。多分、手取りで24,5万はあると思う。家賃はここだけになるから、何とかやりくり出来るような気がするけど…」


「それは大丈夫だと思います。私、相談があるの」


「改まって何かな?」


 にっこり笑いながら言う。


「実はね。看護学校時代の同級生から、看護師に来て欲しいと頼まれているの。医者と結婚して医院を開いてるの。勤めようかと思ってるの」


「うーん、良い話かも知れないね。玲子さんが勤める気なら構わないよ」


「それとね。私の家財道具はどうしましょう?」


「そうだね。ここに入り切れないね…。もう一部屋欲しいね。わかった。引っ越しついでだ。新たに二人の家を捜そう。これから不動産屋に行こう。善?は急げだ」


 コロナ禍の影響で賃貸物件の動きが少ないらしい。おかげで若葉駅から15分の所に一戸建てを見つけることが出来た。


 築16年の3LKで割と綺麗な家だった。家賃は11万円で池田の住むマンションに2万円程高いだけだった。


 玲子は新婚生活が始まると、毎朝目が覚めた時から幸せを実感した。いつまでもこの幸せがずっと続いて欲しいを願った。そのためには何でもしようと思った。


 彼の喜ぶことは何でもした。身の回りや料理はもちろんのこと。特に身体のことは心配をした。運転が仕事だから事故のないようにと、毎朝天に向かって祈った。

 

 そんな時、ふと頭を過ったことがあった。接種のことである。もし自分が感染して彼に移すことがあったらどうしよう。


 玲子は自分の身体に不安を持っていた。虚弱体質だった。子供の頃から予防接種を何度受けたことだろうか。その度に高熱や痛みや湿疹に悩まされた。


 最後に受けたインフルエンザ予防接種は、高熱と悪寒に悩まされた。接種は効果があったかどうか疑問だ。これまでの接種で対象の病気になったことは一度も無い。


 予防接種の副作用で悩まされてきた玲子は、これ以降予防接種は受けないと、心に決めた。身体を痛めるだけだ。自分は医療従事者である。予防の対応は心得ている。


 しかし、今は違う。私が万が一、発病して彼に移すことがあったらどうしよう。心配と不安で動悸がして来る。接種のことは、彼には聞かれないから黙っていた。


 自分の虚弱体質のことなどどうでも良くなった。彼のことを考えると接種しなくてはと居てもたってもいられなくなった。


 玲子は役場に連絡を入れ、二日後に接種した。感染して池田に移すのことがあったら、この世に生きてはいられない。


 接種後の副作用は熱が出て身体が気怠くなっただけだった。2回目接種の日も決まった。この日から心が落ち着いて晴れやかな気持ちになった。


 この人の為なら何でもするとさらに決意した。接種は医院の就職にも幸いした。



 二人の新居生活も半年になると、新鮮さも落ち着いて全てが当たり前になった。二人の帰宅は19時前後でほぼ一緒だった。


 玲子は同居以来、外食をさせなかった。池田が美味しそうに食べるのが嬉しくて、食事を作るのが生き甲斐になっていた。


  毎日勤務中に献立を考えていた。昼食時間、この日はたまたま献立談話になった。先輩看護師がにんまり笑いながら、


「セロリのきんぴらって効くのよ」


 と玲子を見ながら言った。


「何が?」


 玲子が聞くと、


「馬鹿ね。あれに決まってるでしょう」


 同僚看護師が笑いながら言う。二人は共に既婚者である。先輩看護師は一回り以上上で40歳を過ぎている。それを聞いて試したくなった。


「おいしいね。これ、セロリだね。初めてだよ。セロリの炒め物」


「きんぴらよ。おいしいでしょう?沢山食べてね。身体に良いから」


「うん、良さそうだ。でもセロリは生で食べるものだと思ってた」


 食事が済むと、珍しく疲れたから寝ると言う。そして、自分で布団を敷きだした。


 私は何だ効果ないのねと、がっかりしながら風呂に入った。彼は帰って来ると先に風呂に入る。その間に私は食事の支度を整える。


 風呂から上がり化粧台に座っていると、


「おいでよ。寝ようよ」


 媚びるように言う。あれっ?ひょっとしてと思う。手早く顔を整えて布団に入って行った。


 いきなり飛びつくようにして、乳房を掴んできた。もどかしそうにネグリジェのボタンを外す。痛い程乳首を吸われた。空いてる片手でショーツを脱がされた。


 下半身に固いものがコツコツ当たる。もう勃起しているんだわ。私もじゅわっと潤んできた。その瞬間、確かめるようにゆっくり彼が入って来た。ぎゅっと奥まで。


 そして、内壁を引き上げるように途中まで抜いたがそこから奥まで戻って来た。4,5回繰り返すと中は充分に潤って来た。


 彼は自身の動きで確認すると、目覚めたかのように出し入れを繰り返した。私は心地良さに下半身を押し付けた。さらに奥まで深まる。彼は応じるかのように激しく動き始めた。


 そこは生き物のように吸いついて来た。全部吸い込んであげるわ。全て私の物。全部私のもの。全部頂戴、全部。うわごとのように言う。

   


 溶けるような快感がそこに広がる。突然、身体と心が空中に摺り上がって行く。痛いような快感が頭の後ろを走って行く。


「ごめん、大丈夫?激しかったね」


 玲子は薄目を開けた。気を失っていたようだ。黙って抱き付いて行った。


「私、しあわせ」


 この時不思議だが、身体が確実に一つになったことを感じた。三月後、玲子に妊娠が知らされた。                      

                                                                                                                                     終わり

次回は休みます。1月7日に新作を掲載します。