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            覚悟の失業 1.

 今日で3日も雨が続いている。7月も半ばだと言うのに変だと思い、ネットで調べてみるとまだ梅雨の最中だった。


 関東は例年6月7日頃が梅雨入りで、7月19日頃が梅雨明けとある。昨年は異例で梅雨明けが8月1日だった。


いいわ、暑いよりましだわ。何もすることが無い。読みたい本も無く、聞きたい音楽も無い。


 朝起きてからずっと暇だ。こんな生活続けていて良いのかしら。職場を辞めたのは間違いだったのかも知れない。


 看護学校を卒業してから8年になる。先月いっぱいで職場は辞めた。ワクチン接種を断ったからだ。


 上司や同僚に反対されたが、どうしても接種はしたくなかった。後遺症等色々聞いたからである。


 看護師になったのは、小さい時から虚弱体質で身体が弱く病院は遊び場のように訪れていた。


 先生の診断が終ると、いつも同じ女性の看護師さんが遊んでくれた。いや治療では無く遊んでくれたと言う方が正しい。


 この頃から、将来看護師さんになろうと思った。優しくて綺麗で憧れだった。


 高校を卒業して看護学校に学んだ。卒業と同時に就職したのが先月まで務めた病院だった。8年在籍した。


 正直、接種の後遺症が怖かった。これまで虚弱体質のため、薬等の副作用を多く経験した。


 ワクチン接種の後遺症の話を聞くにつれ、絶対受けないと決心した。

 上司からは接種は自分だけの問題ではない、看護師として業務上の問題であると言われた。


 病院医院は就職出来ないと思った。ハローワークに行ってみたが、事務職は殆ど無くスーパー等のパートが主だった。


 今日も午後から行ってみることにした。そんなに混んでなかった。パソコンに表示されている求人先を見ていると、


「お仕事お探しですか?」


 静かににっこりと小声で聞いて来た男がいた。


 ここをどこだと思ってるのかしら。変な人と思いながら横目で見ると、どこかであったことのある人だ。


 どうしても思い出せない。誰だったかしら。ここで会うからには同じ失業者であるに違いない。振り返った。


 もういなかった。どこに行ったのだろうと辺りを見渡すが、どこに行ったか座ったかどこにもいない。


 画面を見ると社名や店名が変わるだけで、店内スタッフやパートの求人ばかり。女性の求人を見るからだろうか。


 見る気がなくなった。急いで仕事を探さなくても待機期間を入れると5カ月は大丈夫。そう思うと立ち上がった。


外に出ると、何かほっとした。あの中は何か張り詰めているような空気感がある。感じるのは私だけかしら。


 暫く歩いていると後ろから声をかけられた。


「先程はどうも、見つかりましたか?」


 先程声をかけて来た男だ。不審な男だ。返事もせず無視して駅への歩みを速めた。


「覚えていませんか?患者です。先月まで入院していました」


 そういえばどこかで見たような気がしていた。ふと顔を見て立ち止まった。それを許可と思ったのか話しを続けた。


「交通事故だったのです。約ひと月入院してました。304号室の池田です。と言ってもわかりませんよね」


「そうだったのですか、ごめんなさい。急いでいたものですから…」


                                            つづく

次回は7月16日金曜日朝10時に掲載します