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              覚悟の失業 12.


 飲食店は2階にある。数が少なくすぐに周り終えた。1店しか無いレストランに入ることにした。メニューを開くと名物レモンステーキと目に入った。


「清水さんここに来たことありますか?」


「いいえ、初めてです」


「でしたら、レモンステーキはどうでしょう?ここの名物と書いてあります」


「名物とあるのは、きっと人気があるからでしょうね。私もいただききます」


 薄切りのステーキをレモンソースで食べる。さっぱりとして爽やかなおいしさが口に広がった。薄切りのせいですいすいと口に入る。いつもの癖で早飯食いである。


 食べ終わって反省した。相手に合わせなくては、まして女性だ。彼女はまだ半分ほどしか食べていない。池田は添えられたサラダをゆっくりと食べることにした。彼女は気付いていない。


「ごめんなさい、食べるのが遅くて…」


 気付いていたのだ。目の前だ。気付かない方がおかしい。


「すみません。いつも一人で食べてるものですから、つい、癖になりまして…。こちらこそ、ごめんなさい。どうぞ、ゆっくり食べて下さい」


 それでもサラダを合わせるようにゆっくり食べた。食べ終わるのを見て、


「珈琲どうですか?」「はい、頂きます」


 珈琲を飲み始めると彼女がにっこり笑いながら、


「今日は、さっき頂いたCDを聞くのが楽しみです。サラボーンの何て言いましたっけ?」


「リーチン・フォー・ザムーンです。素敵な歌です。一度聴くと頭から離れなくなります」


「うわー、聴きたくなります。何日も聴き続けたとおっしゃっていましたよね」


「昨夜も聴いていました。せつなくて苦しくなります」


 池田は聴きながら清水の顔が思い浮かんでいた。それは言えない。せつなくて苦しくて胸が張り裂けそうだった。今、彼女を目の前にしている。


「私、聴きに帰っても良いかしら?」


「ええ、どうぞ。聴きに行って下さい」


 池田は後悔した。余計なことを言ってしまった。そのおかげで彼女は帰ると言う。何で浅はかなんだろうと自分を責めたが、潔く伝票を手にすると立ち上がった。


「あら、そんなに急に…ご予定がおありでしたか?」


「いいえ、何にもありません。清水さんと会えるのが楽しみでした。他に用はありません」


「嬉しいこと言って下さいますね。私、音楽のお話が聴きたいです」


「何でも聞いて下さい。音痴ですから、歌は聴かせられませんが…はは」


「私も音痴なんですの。ジャズボーカルが好きと言いましたが、私が唄うと、それまで唄わなかかった友達が唄い始めます。私も唄うとか言って…」


「うーん!何か良くわからないけど、これからカラオケに行きましょうか?」


「カラオケですか?コロナで休みですよ」


「残念でした。10月1日より開いています。行きましょう」


「えっ、私、まだ行くとは言ってないのですけど…」


「すぐそこですから、行きましょう」


 伝票を手に池田は立ち上がった。


「あっ、私お幾らかしら?」

「ここは僕が誘ったのです。僕が払います」


 レジを出ると清水がレジ近くで、金額を聞いていたらしくお金を渡そうとする。


「すみません。僕に払わせて下さい」


「でも、ご馳走して頂く理由がありません」


 清水はお金を渡そうとする。


「それでは、こうしましょう。これからカラオケに行きます。そこは清水さんのお支払いでどうですか?」

「はい、わかりました」


 清水は成り行きで返事をした。カラオケは行くとは言っていなかったのに。おかしなもので不愉快な気持ちは無く、なんとなく楽しい気持ちになっていた。もちろん、池田も。

                                                                                                                                      つづく

次回は10月8日金曜日朝10時に掲載します

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