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     素敵な人 2.

 「はい。少しでしたら」


 思いがけない誘いに嬉しくなった。


 男に付いて地下構内のカフェに入った。中央改札から少し歩いたところにあった。昔ながらに注文を取りに来た。


「珈琲で良いですか?じゃ、2つね」


 珈琲が届くまで男の顔を見るのが恥ずかしかった。30半ばを過ぎているのに、乙女のような気持ちである。


「考え事をしてまして、次は池袋だなと思っていたら大塚でした」


 男は可笑しそうに笑いながら言う。


「私もそうです。本当にうっかりしました」


「向かいのホームに行きながら、同じことをする人がいる。降りる人の方向ではないので目につきました」


「あら、見てらっしゃったのですか?」


「見れば綺麗な人です。電車に乗ると、自然なふりをして隣に立ちました」


「綺麗だなんて…」


「こんな綺麗な人が何を考えていたのだろうと、興味が沸きました。それで思い切って声を掛けました」


 彼女は『あなたが気になっていたのです』とは言えない。黙っていると、


「当ててみましょうか?彼氏のことでしょう」


「そんな…、いません」


「えっ、そんなことないでしょう?見ず知らずの男です。隠さなくて大丈夫です」


「いたら、ご一緒していませんわ」


 にっこり笑いかけるように言う。


「失礼なことお聞きしてごめんなさい。でも本当ですか?」


「いけませんか?私、縁が無いのです」


「それは違います。男は綺麗すぎると声を掛けにくいのです。僕には立派な理由がありました」


「理由ですか?」


「はい、共通の乗り過ごしです」


 男はにっこり笑いながら言う。


「面白い方ですね」


 彼女も笑いながら言う。思えば通じると言うが、こんなことがあるのだろうか。嬉しくなった。


「でも僕の本当の理由は、あなたが気になっていました。池袋で降りると良いなと見ていたら、ドアが閉まってしまいました」


 彼女は唖然として、言葉を無くした。


                      つづく

次回は2月7日金曜日朝10時に掲載します