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      素敵な人 1.

 もうそろそろかしら、スマホをバックに仕舞った。2駅先終点新宿で降りる。はっと思った。一目で心が魅かれた。


 じっと見つめてしまった。これまでにも数年に一度くらいそんなことがあった。見つめたのは今回が初めてである。


 大抵は数回見直してそのまま忘れる。今日は違った。男は濃紺のスーツ。白のワイシャツにグリーンのネクタイ。


 年の頃40歳半ばであろうか、涼し気な目を前に向け、柔らかな視線で前を見ている。何かを考えている風だ。


 目の前右に三人隣である。男は終点新宿のアナウンスを聞くと、膝の上のビジネスバックを手に持った。


 彼女は男が立ち上がるのを待って立った。ドアが開くと一斉に乗客は降り始めた。彼女は男の後ろ側に続いた。


 男は山手線改札へ入って行った。彼女も同じ山手線。池袋だと良いなと思った。澁谷方向だと逆回りになる。


 男は9番線に上って行った。彼女も9番線だ。人を押し分けるようにしてその後に続いた。ホームで男の隣の列に並んだ。


 電車の中は座れないが比較的すいていた。隣の乗車口から乗った。出来るだけ近づいた。2人隣のつり革掴まった。


 外はもう暗い。窓に彼の顔が映っている。どこで降りるのだろう。私、池袋で降りるの。一緒だと良いな。


 目白を過ぎた。窓ではなく、直接何気ないふりをして彼を見た。じっと動かない。電車は池袋を発車した。


 私どうしたのだろう。とうとう池袋で降りなかった。これ、ストーカーよ。愕然とした。次の大塚で引き返そう。


 大塚で降りると、偶然彼も降りた。ホームは一つである。内回りと外回り。私は向かいの内回り側に立った。


 ふと見ると彼も立っている。1つドア離れて立っている。ちらっと私を見た。ドキッとした。


 内回り電車が入って来た。それぞれのドアから入ったが、車内では隣同士に立った。何だか気恥ずかしくて前を見ていた。


「乗り過ごしましたか?私もです」


 彼に突然声を掛けられた。にっこり笑っている。


「あ、はい。うっかりしまして」


「どちらまでですか?」


「池袋です」


「僕もです」


 二人は一緒に池袋に降りた。改札まで並んで歩いた。改札を出たところで彼が言う、


「うっかり同士で変ですね。少しお茶しませんか。ほんの少しで良いんです。こんな偶然ありませんから…」


                        つづく

次回は1月31日金曜日朝10時に掲載します