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      百円玉と雨 9.

 彼女は五木と佑汰がゲームするのを、テーブルに座ってにこやかに微笑んで見ていた。しばらくして、


「コーヒーが入りました。どうぞこちらへ」


 良い香りが漂っていた。ドリップタイプの珈琲だ。


「佑汰はオレンジジュースよ」


「なんで僕だけジュースだよ!仲間外れだよ」


「あら、珈琲飲むの?嫌いじゃなかったの」


「おかあさん、僕は嫌いだと言ったこと無いよ」


「おいしくないと言ってたから…、ごめんね。今入れてあげるわね」


 五木は佑汰がお母さんと呼ぶのを好ましいと思った。彼女のしつけだろう。彼女の人間像が見えた気がした。


 佑汰は得意げに五木を見ながら、続けて勝ったことを母に話していた。いつの間にか時間が過ぎた。もうすぐ4時だ。


 長居してしまった。帰ると言うと、佑汰が腕にすがりながら止めた。それでも帰って来た。


 後ろ髪を引かれる思いだった。これ以上居て、彼女に嫌がられては困ると思ったからだ。


 彼女の思いは逆だった。心にほのかな思いが芽生えていた。夕飯は何を食べてもらおうかと思案していた。


 佑汰だけでなく彼女も落胆していた。五木に知るすべもなかった。


 アパートに帰り着いた五木は心が落ち着かなかった。二人の顔が頭に交互に浮かんだ。出来ることなら戻りたかった。


『そうだ!彼女は捻挫している。夕飯を作るのは大変だ。持ってってあげよう。それに、お昼をご馳走になったままでは悪いし』


 五木は何にしようかと迷った挙句、スーパーで5人前のすし桶を買った。知らず知らずに早足になっていた。


 呼び鈴を押すと部屋の奥から、


「どちら様ですか?」


 と彼女が聞いて来た。


「五木です」


 その声にどたどたどたと足音がして、


「おじちゃん!」


 と言いながら佑汰がドアを開けた。


                       つづく

次回は8月23日金曜日朝10時に掲載します