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    百円玉と雨 8、

 五木の帰った後も、佑汰は何やら一人遊びしていたが、ごろりと横になったまま眠ってしまった。


 香山は小さめのタオルケットをその上にそっと掛けた。右足をかばいながら椅子に座った。


 ふと、おぶってもらった時の背中の温かさを思い出した。胸が触れて恥ずかしかった。


 五木に湿布の包帯をしてもらう時も、足に手が触れドキッとした。顔を上げられなかった。


 佑汰があんなに喜んでいる姿は初めてだった。いつもは無口で一人遊びをしていた。香山の心はほのぼのとしてきた。


 そんな時に、なぜか別れた彼を思い出した。優しい人だった。しかし、一緒に住み始めると色々なことが違っていた。


 私は結婚するつもりでいたのに、彼には他に付き合っている人がいるようだった。スマホで連絡を取り合っていた。


 仕事の連絡だと言って、少し離れて事務的な話し方をしていたが、女性の声が漏れ聞こえていた。


 決定的なことがあった。スーパーの買い物の帰り、電話がかかってきたようだ。私は知らぬふりをして先に歩いた。


 いらついた私は道の窪みにつまづいて転んだ。周りを歩いていた人たちが心配して手助けをしてくれた。


 そこへ彼が戻って来た。転んだ拍子に散らばった食品を拾っていると、


「卵大丈夫か?」


 私への心配の言葉は無かった。私は無言のまま片足を引きずりながら、買い物袋を手にアパートへ向かった。


 彼が買い物袋を持つと言ったが、私は自分で持った。悔しさと怒りでいっぱいだった。


 その日から彼の全てが嫌になった。その一か月後、彼と別れた。彼は二人目の男性だった。


 最初の彼は学生の頃の恋愛である。彼は就職すると北九州に配属された。勤務が落ち着いたら、結婚しようと約束された。


 その一年後、彼から別れるという手紙が来た。理由は君の幸せのためにだった。しかし、その理由は書いてなかった。


 それから一年後、彼が北九州の人と結婚したと友人が教えてくれた。理由はそう言うことだった。


 男ってみんな同じね。信じた二人目の彼と別れた後、香山は妊娠していることがわかった。彼には知らせなかった。


 七カ月後、香山は出産した。男の子だった。佑汰と名付けた。あれから七年の歳月が過ぎた。


                       つづく

次回は8月16日金曜日朝10時に掲載します