Shopping Cart
Your Cart is Empty
Quantity:
Subtotal
Taxes
Shipping
Total
There was an error with PayPalClick here to try again
CelebrateThank you for your business!You should be receiving an order confirmation from Paypal shortly.Exit Shopping Cart

   百円玉と雨 6、

 ドアの前に近づくと、


「あ、おじちゃん来た!」


 中から佑汰の声が聞こえた。


 彼女はさっきのままでいた。


「湿布と包帯です。使って下さい」


「ありがとうございます。おいくらでしたか?」


「いりません、それより早く湿布して下さい」


 幸いなことに、彼女はクロップドパンツ(丈の短い)を穿いていた。袋から湿布を取り出すと大きすぎた。


「佑汰、ハサミを持って来て」


 程の大きさに切って、くるぶしの周り巻くように乗せ包帯を巻こうとするが、動かすと痛いらしく巻くのがもどかしい。


「僕が巻きましょう」


 男は彼女の返事も聞かずその続きを巻いた。その足をそっと持ち上げゆっくり優しく巻いた。


 彼女は、男の優しい仕草に嬉しくなった。心の中にある氷が少しづつ溶け始めた。


「ありがとうございました。すごく楽になりました」


 彼女は両手と壁を使って立ち上がった。そして右足をかばいながら一歩二歩と歩いた。


「大丈夫です。ありがとうございました。本当にありがとうございました」


 男の優しさが嬉しくて、重ねてお礼を言った。


「それじゃ、僕はこれで失礼します」


「おじちゃん、帰っちゃだめだよ。遊んでよ!」


「また今度遊ぼうね」


 男は残っていたかった。”うん、あそぼー”と返事したかった。彼女が心配だった。


「ご主人に帰って来ていただいたらどうでしょう?」


 彼女は少しためらいがちに、にっこり笑って。


「いないのですよ。佑汰と二人です」


 男は慌てた。


「ごめんなさい、余計なことを言ってしまいました」


「良いんですよ。何でもないことですから」


「……」


 男は返答に困り、目を逸らした。それでも心には、ほのかな灯りが付いた。


 気まずそうな二人の顔を見て、佑汰は自分が取り残されたような気持ちになった。


「僕お腹空いちゃった!ねぇ、おじちゃん!一緒にご飯食べようよ。お母さん。おじちゃんも一緒にご飯食べよう!」


 彼女は一瞬どう返事していいかわからなかったが、男の戸惑った顔を見て、なぜかせめてものお礼がしたいと思った。


「そうでしたね。何にもありませんが、お昼ご飯一緒にいかがですか?」


                       つづく

次回は8月2日金曜日朝10時に掲載します