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    百円玉と雨 2.

 スーパーに入った。男の道順はいつも決まっていた。入口に近い果物売り場から、肉や魚の売り場を通過して、弁当と総菜売り場に行く。


 直接、弁当や総菜売り場に行けば良いものをと思うが、思い付きと気分で刺身や肉を買ったりするからそうもいかない。


 肉売り場で足が止まった。3日続いた雨も上がった。何だか気分も爽快だ。よし!ステーキにしよう。


 国産霜降りステーキから輸入ステーキまで色々あって目移りする。結局決めたのは、輸入ステーキの2枚千円程の肉である。


 手に取ってカゴに入れようとしたら、


「おじちゃん!さっきはありがとう。あのあとね、百円拾っちゃった。ほら!すごいでしょう」


 男の子はポケットから百円玉を出して見せる。その後ろから、


「佑汰、今日はお肉は買いませんよ」


「さっきのおじちゃんだよ!お母さん」


 母親は急ににこやかな顔をして、


「先程はありがとうございました。お心遣い、なんと申し上げて良いやら…」


「何のことか、わかりませんが、人なつっこいお子様ですね」


「とんでもありません!人見知りがひどくて困っているんです。知らない人が来るとすぐ後ろに隠れてしまうんです」


 男は手に取った安いステーキパックを、何気ないふりで元に戻した。女性の前でなぜか見えを張った。


「お料理をされるのですか?」


「はい、と言っても焼くだけですけど。今日は休みですから…」


「奥様の休息日ですね」


「いえ、独身です。いつもは弁当です」


「あら、そうは見えませんでした。落ち着いていらっしゃるから…」


「そうですか、ありがとうございます」


 男は答えようがなく、とりあえずお礼を言った。母親はにっこり笑うと、


「お邪魔しました。それでは失礼致します。佑汰、行きますよ」


「はーい!おじちゃんバイバイ!」


 男は後に残されたような気がして、妙に寂しい気持ちになった。母親の優し気な笑顔が頭に焼き付いて離れなかった。


                       つづく

次回は7月5日金曜日朝10時に掲載します