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      百円玉と雨 15.

「お疲れになったでしょう。今日は本当にありがとうございました」


「いえ、楽しい一日でした。疲れなど少しも感じません」


「お気遣いありがとうございます。大切なお休みの日を申し訳ないと思っています」


「とんでもない、何だか家庭を持ったような気がしました。こんな日が続いたら良いなと思ったくらいです」


「そんな嬉しいことをおっしゃって、本気にしますよ」


 彼女はそう言った後で、恥ずかし気に後ろ向きになった。そして、冷蔵庫を開けながら、


「お腹お空きになったでしょう。今、お食事の用意致します。召し上がって行って下さい」


「良いんですか?では遠慮なく」


「その間、テレビでも見ていて下さい」


 チャンネルを渡された。


「いえ、いいです。見たくありませんから」


「退屈しませんか?」


「いいえ、作るのを見てますから大丈夫です」


「そんな…、困ります」


「じゃ、佑汰君と寝てます」


 五木は立ち上がると、次の間の佑汰の横にごろりと横になった。佑汰は軽い寝息をさせて寝ている。


 その寝息に誘われるように眠ってしまった。どれほどの時間が経ったのであろうか。


 佑汰が腕の中で寝ている。自分の身体にはタオルケットが掛けられていた。そっと見回した。


 部屋の明かりは消してあり、キッチンだけが明るかった。彼女がテーブルにうつぶせに寝ている。


 起き上がると、掛けてあったカーディガンを肩からそっと掛けた。彼女は目を覚ました。


「すみません。眠ってしまいました」


 立ち上がろうとして、よろけてしまった。五木は思わず両手で支えた。目を閉じた彼女の顔が目の前にあった。


 そのまま口づけをした。両手で強く抱きしめ直した。彼女もそっと抱き返した。長い口づけだった。


「お母さん、なにしてるの?」


 佑汰が起きて来た。


「僕、お腹空いたよ」


「はい、ご飯にしましょうね」


 彼女はすぐさま母親に戻った。五木はそんな彼女がますます愛おしくなった。


 ご飯の最中、佑汰が突然口を開いた。


「お母さん、さっきキスをしていたよね。おじちゃん好きなんだよね。僕も好きだよ。だからおじちゃんと一緒にいたい」


 五木も彼女も唖然とした。見られていたのだ。顔を見合わせた。


 五木は気恥ずかしいより、佑汰にせつなくなった。佑汰に自分を見ているような気がした。佑汰を抱きしめた。


 五木は心に決意した。佑汰と彼女を必ず幸せにする。


 一月後、五木は彼女との婚姻届けを出した。


                       終わり

次回新作は10月11日朝10時に掲載します