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  百円玉と雨 13、

 五木は海水をかける手を止めた。彼女の嫌がることをして、嫌われたくないと思った。


 止めたのを良いことに、佑汰はそばに来てジャバジャバと容赦なくかける。目に海水が入った。堪らず海へ逃げた。


「お母さん大丈夫!」


「大丈夫よ」


 にっこり笑うと佑汰と手をつないだ。


 振り返った五木は、二人を様子を見て取り残されたような気になり、ふと寂しくなった。


「ごめんなさい、大丈夫ですか?」


「はい、全然平気ですよ」


「良かった。香山さん泳げます?」


「もちろん、泳ぎは得意なんです」


「よし、じゃ、みんなで泳ごう。ちょっと待っててね」


 五木は海の家に戻り、大きな浮袋を借りて来た。佑汰を中に入れると二人で深瀬に入って行った。


 五木と彼女は胸のあたりまで海水が来た。


「この辺で良いでしょう。泳ぎましょうか?」


 佑汰は当然足が立たない。怖がりもせずと思ったが両腕でしっかり浮袋を巻くように掴んでいた。


 五木と彼女は、佑汰の左右に浮袋を巻くようにして泳ぎ始めた。


 五木は海岸沿って平行に泳ぐつもりで彼女に指をさし、


「この方向に泳ぎましょう!」


 五木は大きく足を広げるようにして、平泳ぎの動きで向きを変えた。彼女も同じようにして向きを合わせた。


 泳ぎは得意だと、言うだけことはある。その時偶然、二人の足は触れ合った。佑汰は二人に関係なくばた足をしていた。


 触れた瞬間、五木はドキッとした。謝ろうと思ったが、彼女は何事もなかったように泳いでいる。


 その後、ターンを繰り返しながら浅瀬を泳いだ。度重なる足の触れ合いに慣れたのか、それは当たり前のようになった。


 五木は、いつの間にか女性への不信感が無くなっていた。女性には裏の顔があると思い、いつも裏読みをしていた。


 親切にされても優しくされても、きっと裏があるといつも心は冷めていた。恋心等、少しも持ったことは無なかった。


 20数年前に出来た心の氷はそのまま溶けずにいた。それが僅か3か月で跡形もなく溶けてしまった。


 佑汰と遊ぶうちに、彼女の裏表のない優しさ気遣いを知った。二人の間に心が無垢の佑汰がいたからである。


 考えてみれば、女性不信は継母一人によるものだった。父に話すこともせず、人に相談も出来ず。一人苦しんでいた。


 20数年間、女性の優しさと気遣いを裏読みして、それを踏みにじっていた。悲しい男である。愚かなことであった。


 昼食はパラソルの下で食べた。炎天下の傷みを考えたのだろう。全て梅干しのおにぎりだった。


 卵焼きに、から揚げとピーマンフライ。彩りよく並べてあった。小さなタッパーには厚切りの沢庵。


 デザートに彼女はリンゴを剥いた。五木と佑汰はお腹いっぱいで、ごろりと横になった。


 五木は佑汰に腕枕をした。佑汰はわざと五木の上に片足を乗せた。何でも許されるのだ。佑汰は嬉しくて堪らない。


「おじちゃんが、お父さんだったら良いな!」

次回は9月20日金曜日朝10時に掲載します。

 本日は掲載が2度も遅くなりまして、申し訳ありませんでした。深くお詫びいたします。