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    百円玉と雨 12、

 佑汰は五木を見かけると走った。いつもは混んでる改札口も土曜日は人が少なく、すぐに見つけられた。


「おじちゃん!待った?お母さんが遅いんだもん。ごめんね」


「大丈夫だよ。はい、切符!」


「えーっ、僕の切符?初めてだよ。うれしいな!」


 佑汰は遅れて来る彼女に見せに戻る。


「お母さん!切符だよ。おじちゃんに貰った!」


 彼女は両手に荷物を抱えている。右手に小さめのボストンバック、左手に紙袋。五木の方を見て会釈する。


 電車の中の佑汰は静かだった。二人の間に座っていたが、後ろ向きに座り走りゆく外の景色を眺めていた。


「江ノ島は15年ぶりですよ。学生時代友人達と来て以来です。佑汰君のおかげです」


「私も15年ぶりです。私も学生時代です。サークルの仲間と一緒に来ました」


 電車は若葉台を出ると二度乗り換えて1時間少々で片瀬江ノ島に着いた。


 まだ10時半と言うのに、改札から大勢の人がぞろぞろと海岸へ向かって歩いて行く。


 三人は海の家の更衣室で着替えた。五木と佑汰はすぐに着替え終え、海の家の前で彼女を待っていた。


 佑汰は目の前に見る海に驚いていた。真っ青な空の下にきらきら輝きながらどこまでも海が続いていた。


 佑汰が電車の中で見る海とは大きさが違った。どーんと目の前に空と海が広がっている。太陽が眩しく熱い。


「お母さん遅いね。何してるんだろう?」


 佑汰は嬉しくてわくわくしていた。


「お待たせしました」


 彼女が出て来た。白のビーチウェアの下は、コバルトブルーに白とピンクのバラをあしらったワンピース水着だった。


 五木はその魅力的な姿態に言葉を失った。


「ごめんなさい。遅くなりました」


「お母さん遅いよ!おじちゃん早く行こう!」


 海辺の砂浜に陣取り、借りてきたパラソルを開き五木と佑汰は海に入って行った。彼女はそこから二人を眺めていた。


 太陽がじりじりと肌に当たり心地よかった。佑汰は五木に手を引かれて足をバタバタ浅瀬を泳ぐ。


 時々、小波を被って海水を飲んだ。楽しくて嬉しくて夢中になっていた。ふと気になって母を見た。


「お母さん呼んでくる!」


 彼女が佑汰に手を引かれて来た。五木は胸がどきどきして来た。その気持ちを誤魔化すように二人めがけて海水を手ですくってかけた。


 彼女は嬉しそうにキャーッと声を上げた。佑汰はすぐに応戦して来た。そばに来てかけ合った。


 彼女は両手で顔を抑え、かけられるままでいた。水着が見る間に濡れていった。


                       つづく

次回は9月13日朝10時に掲載します