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        男の面目 3

 国内では二人の数字を興味を持って見ている者達がいた。勝負は始めから決まっている。比較は考えていなかった。


 法人営業は1社5部以上の成果が報告された。一般営業は1社1部づつで、日々の成果合計は法人の半分以下であった。


 営業に大きな違いがあった。法人営業は日々の根回し延長線上にあり、一般営業は即決営業であった。


 新聞価格は国内の4倍程もした。予算組が当たり前で即決は極めて難しいとされた。


 比べる者達の間では、一般営業は凄いと称賛していた。即決で出せる成果ではない。しかし、男の耳には届かなかった。


 男にとっての日々の成果は無念であった。5日で体重が3キロ落ちた。精神的地獄であった。


 最初の1週間が終わった。シンガポールでは土日は完全に休日と徹底されていた。


 男は5日目の夕食は食べる気がしなかった。ホテルの部屋の中を居場所が見つからず立ったり座ったりしていた。


 2週間の日程は来週から中間日に入る。事を起こすのが遅くなれば成果から逃げたと思われる。


 身体に変化が起きたのはこの日からだった。何の意味もなく意識もなく、涙がこぼれてくる。


 後日思い出したことであるが、屠殺場へ向かう牛は近ずくにつれ涙を浮かべると言う。本能で察するのであろうか。

 

 男はその涙に気付いた時、何と弱気な自分だと腹立たしく思った。明後日の日曜まで、まだ2日もあると思い直した。


 そして、必死に呪文を唱えるように繰り返し考えた。必ず方法はある。思いつかないだけだ。必ずある。


 ありとあらゆる方面から考え詰めた。必ずある。お前が気付かないだけだ。しかし、悔しくも土曜日は過ぎた。


 ところが二日目の日曜日の深夜、ぱっと思いついた。


                        つづく

次回は3月1日金曜日朝10時に掲載します