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       独身主義 9.

 仕事には自信があった。企画課に移動になってから毎日が楽しかった。自分の意見に課員の誰もが注目する。


 中堅の家庭用品のメーカーは、常に新製品を心掛けてなくてはならなかった。これが高橋には面白かった。


 どんどんアイデアを出した。そして何度か採用された。仕事が面白くて趣味の様であった。それは生き甲斐になっていた。


 半面、女性に対しては臆病になっていた。独身主義とは逃げることだ。断られる前に曖昧にして逃げることである。


 彼女が去って12年になる。もう殆ど思い出さない。思い出したくない。しかし、女性に臆病になっていた。


 素敵な女性を見ると、他に付き合っている人がいる。自分のような男に好意を持つはずがない。身の程を知れ。


 吉田に呼ばれて立ち上がった時、水野の戸惑った顔が頭に浮かぶ。土曜日と言われた瞬間断られたと思ったからだ。


 電車を降りると、ホームから吉田に電話をした。


「電話番号は知らないよ。ちょっと待って、今、木村さんに聞いてみる。一旦切るね。折り返し電話する」


 すぐに折り返し電話があり、教えてくれた。


「水野さん、すごく楽しかったと喜んでいたらしいよ。お前はどうだ?」


「もちろん楽しかったよ。でもな、俺なんかと付き合ってくれるかな」


「馬鹿だなお前は、俺が気を聞かせてお前たちだけにしたのに帰りやがって。電話は彼女に無断で教えたから、まずはメールにした方が良いよ」


 高橋はすぐにメールした。


”高橋です。突然のメール失礼致します。今日はご一緒いただきまして、ありがとうございました。


 夜景を見ながらのお話。素敵な時間でした。特にジャズのお話が出来たのは嬉しかったです。


 エディ・ヒギンズのCDお渡ししたいのですが、土曜日のこと、お話が途中になってしまいました。


 水野さんの都合の良い場所と時間にお持ち致します。ご連絡いただけないでしょうか?”


 長いメールになってしまいましたが、よろしくお願い致します”高橋は逸る気持ちで送信した。


                       つづく

次回は5月29日金曜日朝10時に掲載します