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       独身主義 23.最終回

 昨夜はとうとう電話はなかった。テーブルは10人の席。隣は彼女の席になっていた。そこだけ空いている。


 どうしたのだろう。まさかに欠席するとは思えない。それでも不安になった。なんとなく胸騒ぎがする。


 高橋は会場を出て電話してみようと思ったが間もなく開宴。マナー違反だがスマホをテーブルの下で操作した。


 その時、隣の椅子が後ろへ引かれた。係の案内で彼女が座った。高橋はほっとした。声を掛けようとすると、


「お元気でしたか?」


 彼女が寂しそうににっこりと言う。


「元気だよ」


 そう言って口をつぐんだ。テーブルのみんなが注視しているのがわかる。彼女は下を向いたままだ。


”大変お待たせいたしました。新郎新婦入場です”


 新婦が際立って美しかった。白い水仙のようだ。新郎の吉田はがちがちに緊張している。顔が引きつって見える。


 媒酌人の挨拶も終わり、歓談の時間に入った。高橋は何気ないふりをして水野を見た。水野と目が合った。


「ブロークン ブロッサム](壊れた花=散り行く花)


 水野が悲しそうな顔をして小さな声でつぶやいた。


 高橋は聞き逃さなかった。聴き慣れた曲のタイトルだが言葉として聞こえた。冷却期間は終わりだ。


「水野さん、もう終わりにしませんか?」


「えっ!」


 水野は小さく声を上げた。そして俯いて、


「わかりました。色々ありがとうございました」


 水野は席を立って出ていった。高橋は誤解をされたと咄嗟に気付いたが遅かった。


 歓談中の化粧室は普通のことである。水野は会場を出て行った。高橋は追いかけたかったがじっと堪えた。


 高橋は冷却期間を自分から言い出しながら、2か月になるとは思いもしなかった。精々1週間もすればと思っていた。


 原因は自分にある。過去に付き合った彼女をふと重ねて考え、誤解したのである。考えてみれば酷い話である。


 ところが、今度は彼女に誤解させてしまった。冷却期間のつもりが、二人の関係と思われてしまったたのである。


 自分の軽率な物言いに血の気が引いた。何としても誤解を解かなければと思った。幸い水野は15分程で戻って来た。


 吹っ切れたような明るい顔をしている。高橋は逆に不安になった。間もなく新郎新婦のお色直し入場である。


「さっきはごめんね。誤解があったようだ。あれは冷却期間のことだよ」


「良いんです。もう終わったことです」


「そうじゃないんだ。それは違うんだよ」


 盛大な拍手の中新郎新婦の入場である。吉田は落ち着いていた。にっこり笑みを浮かべ新婦と入場して来た。


 和装から純白のウエディングドレスに召し換えた新婦の美しさは誰もが息をのんだ。ケーキ入刀を終えた。


 来賓のスピーチの後、友人のスピーチが始まった。


”新郎友人を代表致しまして、高橋一郎様にご祝辞を頂きます”司会の言葉があった。


「高橋と申します。学生時代からの長い付き合いをさせていただいております。友人と言いながらも吉田君は兄貴の様でした。会社は違いますが仕事から遊びまで何でも教えて貰いました。しかし、おかげで婚期を遅らせてしまいました。あっ、その方面は全くありません。誤解のないようにお願いします。世間には恥ずかしいので独身主義だと公言しておりました。ところが突然、吉田君から今度俺は結婚すると言われました。そして、お前にも良い人を紹介すると1年程前に女性を紹介されました。実は新婦木村さんの同僚でした。僕は会話が苦手で、先程の話と同じように良く誤解されます。でも彼女は話さなくても心が通じる人です。今日は一緒に招待されました。吉田君安心して下さい。僕達も結婚します。何から何までありがとうございました。但し、子供だけは自分達で何とかします。お祝いの言葉が感謝の言葉になってしまいましたが、心からお祝い申し上げます。これからもお手本にさせていただきます。どうぞよろしくお願い致します。おめでとうございます」


 席に戻ろうとすると司会が彼女の名前を聞いた。


”恐れ入りますが、水野様ご起立をお願いします。おめでたい披露宴におめでたが重なりました。最高の披露宴です。皆様、お二人にも盛大な拍手をお願い致します”


 新郎新婦も立ち上がり大きな拍手をした。会場は割れんばかりの大拍手だった。水野は泣いていた。


 披露宴が終わると高橋と水野は一緒に帰って行った。翌日の月曜日、二人は婚姻届けを役場に出した。


                       終わり

 4か月の連載お読み下さいましてありがとうございました。来週9月4日より新作を掲載いたします。こちらもよろしくお願い致します。うちのひろと