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       独身主義 20.

 待ち遠しかった。やっと今日は土曜日である。高橋は一日がこんなに長いと思ったことは無い。


 昼が過ぎて1時になってやっと2時。高橋はアパートをを出た。新宿は小田急の山野楽器に向かった。


 寺井尚子のドリームダンシングを手にしてほっとした。発売が大分前だからなかったらどうしょうと思っていた。


 安心するといつものコーナーに向かった。クラシックの輸入盤のコーナーである。


 ひと頃に比べ扱い量はかなり少なくなった。それだけに名指揮者の思いがけない曲目や演奏が見つかったりする。


 見つけた時の喜びは、うふふとにんまりする。しかし、今日は並ぶタイトルのどれを見ても興味がわかない。


 再びジャズのコーナーに戻った。何気なく見回していると、女性ジャズピアニストのジャケット写真。金髪女性。


 ビージー・アデールとある。3枚並んでいる。ビートルズとナッキング・コールのカバー集を2枚買った。


 時計を見るとまだ4時になったばかりだ。本当に時間が経つのが遅い。本館の書籍売り場に向かった。


 停車駅は京王新宿から約25分。高橋は雑誌を立ち読みしながら何度も腕時計を見る。やっと5時になった。


 なぜか気持ちが逸って仕方がない。京王線に乗り込んだ。駅に着いたのは6時に20分前だった。


 改札を出て立っていると、


「高橋さん!」


 にっこり笑った水野が近寄って来た。水野も高橋を迎えるのが嬉しくて、30分前もから改札口に来ていた。


 高橋は年甲斐もなく照れていた。横に並んで歩いたが、水野の身体が触れそうで歩くのがぎこちなかった。


 部屋に入ると部屋中良い匂いがしていた。シチューの匂いだ。間取りは高橋とほぼ同じだった。


 入口がキッチンの4畳半、奥が6畳で右壁に沿ってベッド。突き当りは机。ピンクのカーテンが閉じてある。


 おいしいビーフシチューだった。二杯目最後は、添えられたフランスパンで皿を掬うようにして綺麗に食べた。


 二人とも顔が真っ赤である。赤ワインのせいだ。ボトルの半分は空いている。幸せ気分に満ちていた。


「これ、プレゼントです。寺井尚子のCDです」


「良いんですか、頂いて?」


「それで持って来たのです。貰って下さい」


「ありがとうございます。早速かけますね。狭いですけどこちらへどうぞ」


 ベッドの前に座布団が用意された。机の正面になる。


「先日の素敵な曲は何番目ですか?」


「4番目の散り行く花と6番目のゴールデン・イヤリングスです」


 曲が始まると水野は高橋の横に座った。甘い彼女の匂いが高橋の顔をかすめた。


                      つづく

次回は8月14日金曜日朝10時に掲載します