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    独身主義 1.

 しとしとと降り続く小雨。今日で3日目になる。空はどんよりと重い。男の気持ちも暗く重く沈んでいた。


 朝からベッドの上で、ごろりと横になったまま。考えるでもなく、ぼーっとテレビを見ていた。今日は日曜日。


 再来週の日曜日は吉田の結婚式である。学生時代の友人で同い年の39歳。相手は28歳の若い女性である。

 

 その女性は男にも顔馴染みである。歳に似合わず落ち着いた雰囲気の女性だ。男は歳を聞いて驚いたくらいだ。


 彼女は婦人服メーカーに勤務している。その勤務先の3年先輩の女性が男の交際相手である。


 男はその交際相手に、意見の相違から2か月近く会っていない。友人の結婚式には一緒に出席することになっている。


 さかのぼること1年前の今頃、吉田から神田の居酒屋に誘われた。半年ぶりのことで何か相談だろうと思った。


「高橋、おまえまだ独身主義か?再来年は40歳だぞ。大丈夫か?」


「そうだよ、俺は断固たる独身主義だ。心配するな」


「それはいつも聞いてる。たった一人の女に振られただけで、独身主義とは情けないな。何だか女々しい気がする」


「何とでも言え、女なんて一皮むけば酷いものさ」


「それは、お前が振られたからだろう。相手にすれば当然の選択だったと思うよ」


「どう言う意味だよ!」


「相手は一流企業で課長職。おまけに背が高くてイケメン。お前は二流企業で平社員。背は普通だが顔はつけメン」


「何だ?そのつけメンとは」


「そのままでは味が無いと言う意味さ。ま、味の無いメン好きもいるかも知れないがね」


「ずいぶんな奴だな。しかし、俺はそんな顔してるのか?ちょっとショックだな」


「良く言えば淡泊。悪く言えばどこにでもある顔。味の無い顔だな」


「この顔は変えようがない。お前だって、ひょろっと長くて馬面だぞ。お前、鏡見てないんだろう」


「ははは、この顔が良いんだよ。藤田まこと似の、味のある顔だと良く人に言われる。悪いな!」


「今は亡くなった役者だけど、人情のある良い役者だったな。しかし、お前には人情のかけらもないけどね」


「馬鹿を言え、俺は独身主義のお前が心配で今日は誘い出したんだよ」


「ほう、心配してくれてたのか。ありがたいことだな。彼女でも紹介すると言うのか?」


「そうだよ、だから今も独身主義かと聞いたんだよ」


「余計なおせっかいだ。聞かなくてもいいよ」


「それは残念だな。俺の彼女の先輩で、凄げえ美人なんだ。美人にありがちなことだが、入社以来彼氏無しだってさ」


「・・・・・・」


 高橋の眉がぴくりと動いた。独身主義はとうに撤回していた。彼女が出来ない理由を、誤魔化していただけだった。


「悪かった、余計な話だったな。ま、たまに会ったんだ。今日はゆっくり飲もうぜ!」


 高橋はその言葉に合わせるかのように、ゆっくりと徳利を手に持ち酌をした。そして、もったいつけて、


「そうだな、せっかく心配してくれたんだから、会ってみようかな」


「ふーん、無理しなくても良いよ」


「いや、友達の好意を無にしては良くない。会って見るよ。いつ会わせてくれる?」


「おや、変わり身が早いな!彼女に聞いといてやるよ」


「すまんな、よろしく頼むよ」


「えっ、頼むって言うのか?人にお願いするのに、礼儀と言うものがあるだろう」


 吉田はにやりと笑って言う。


「いや、すまん。お願いします」


 次の日、連絡が入った。今度の日曜日、4人で一緒に食事することになった。


                       つづく

次回は4月10日朝10時に掲載します