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           独身主義 13.

 水野は5年の間、はぐくんできた二人の愛は何だったのだろうと、思い出す度に涙がこぼれた。


 私の何がいけなかったのだろう。思い当ることは沢山あった。中でも意見が違うと答えなかったことかも知れない。


 私はあなたが好きだったから、反論しては嫌われると思った。いつも黙って顔を逸らした。彼は黙ってしまう。


 いつの間にか歩み寄ることを忘れてしまった。それは澱のようにどんどん溜まって行った。


 私はそのことに気付いていなかった。当然、彼の心に変化が生じ始めていることもわからなかった。


 ある夜、仕事の話等しない彼が、会社の批判をしたことがあった。大分酔っていた。


 彼が転職したのを知ったのは1年後だった。何で黙っていたのと聞くと、


『辛かったからね。話したくなかった』


 笑いながら言う。その顔は冷たく笑っていた。その表情は辛いことを思い出したからだと思っていた。


 彼は話題を変えた。


「来月は海だね。太陽の下で思いっきり泳ごう。仲間とも久しぶりに会える。夏だ!」


「ごめんなさい。言うのが遅くなって、実はその日、法事で帰らなくてはならないの」


 彼に少しの沈黙があって、


「わかった。仕方ないね」


 私をしっかり見ながら、苦笑いして言った。この時、彼の心が決まっていたのかも知れない。


 彼の別れの言葉を聞いた時、私は自分が嫌になった。一緒に暮らせないの言葉は自信喪失になった。


 女性としての自分に、うぬぼれがあったことは否めない。美人で聡明だと言われその気でいた。


 以来、男性と話をするのが怖くなった。結婚など考えない。一生独身でいると決めた。


 あれから5年経った。女性の結婚適齢期の27歳を過ぎて31歳になった。この頃、寂しさと不安が同居する。


 そんな時、今度結婚する後輩から男性を紹介された。会ってみると人柄が良く、落ち着いた人だった。


 お互いにキースジャレットが好きだと言い、気持ちを同じくした。それから、ピアニストの話

になり嬉しくなった。


 明日は、エディ・ヒギンズのCDを貸してもらえる。楽しみで胸がわくわくしている。CDのことだけだろうか。


                      つづく

次回は6月26日金曜日朝10時に掲載します