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     独身主義 12.

 それは吉田にだけで、3年前から独身主義は捨てていた。その吉田の紹介で水野とデートだ。

 もちろん、デートと思っているのは高橋だけである。[あなたは恋を知らない]のCDを渡すだけである。


 貸すだけだから、彼女は「ありがとう。お借りします」と一言で帰るかも知れない。


 日本料理店を、予約にしていないのはそのことを考えてのことである。日が経つのが待ち遠しかった。


 いよいよ明日は土曜日である。今日は同僚の誘いも断り、真っすぐ帰宅した。気分がそわそわして落ち着かない。


 CDは用意してある。明日着ていくものも決めてある。場所も下見してある。用意万端である。でも落ち着かない。


 彼女の微笑んだ顔が思い浮かぶ。素敵な人だ。じっと見ていられなかった。美し過ぎて目をそらしてしまう。


 彼女は明日を楽しみにしていた。男性と二人っきりで話をしたのは、実に5年ぶりである。


 彼女には5年前、恋人がいた。相手は学生時代のサークル仲間。その頃からの5年の付き合いだった。


 卒業後も、恒例のように夏になるとサークル仲間と一緒に海に行った。いつも男女6人か8人のペアで行った。


 5年前のことである。その夏は実家の法事と重なり、彼女は参加出来なかった。


 この夏から彼の態度が変わった。会う回数も極端に減った。なぜかよそよそしかった。


 不安になり、サークル仲間のA子に彼のことを聞くと、


「えっ、どう言うこと?山口君はあなたと別れたと言っていたよ。それでB子と一緒に海に来たんだよ」


 B子は同じサークル仲間で、活発な存在で人気を集めていた。水野とは対照的な女性だった。


 その話を聞いた時も彼を信じていた。私が行けなかったから代わりをお願いしただけよ。


 私たちは愛し合っているもの。いずれ、必ず彼からプロポーズされると思っていた。確信もあった。


 事態は逆だった。それから3か月程過ぎた時、彼から別れようと言ってきた。確信は思い込みに過ぎなかった。


 私ははっと思ったが、B子のことは聞かなかった。聞くのは怖かった。地の底に吸い込まれるような気持になった。


 それでも必死になって、


「私、あなたに気の障ることした?何がいけないの?お願い教えて。何でも直すから。私どうしたら良いの?」


「何も悪いことは無いよ。素晴らしい女性だと思っている。しかし、一緒に暮らせないと思う。色々ありがとう。さようなら」


 水野は、通話の切れた携帯を持ったまま立ち竦んでいた。


                       つづく

次回は6月19日金曜日朝10時に掲載します