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         34.遠望深慮

 郡川藩江戸屋敷は、いつもと変わらぬ平静にあった。江戸屋敷指南役倉橋琢磨は、病気療養中にて道場は、師範代が代わりを務めていた。ひと月程して、琢磨は病状悪化を理由に指南役を辞退した。


 国元へ帰ったのは、それからさらに一か月後であった。噂はあっという間に広がった。それは、早水久忠との試合にも及んだものだった。


 琢磨は藩に一度も顔を出すこともなく、病気を理由にお暇願いを出し受理された。その父伝九郎も指南役辞退願いを出したがこれは受理されなかった。


 藩は江戸屋敷に続き、同時の指南役不在は避けたかった。伝九郎は改めて指南役として藩士の育成を託された。


 そこには遠望深慮が隠されていた。


 秋風が宵闇に心地よい。仕事を終えた職人には、熱燗が恋しい。仕事場から一直線に来たおたふく。障子戸に貸し切りの張り紙。


「何でえ!貸し切りとはふざけんじゃねえ!一人ぐらい良いだろう?」


 がらりと障子戸を開ける。


「いいわよ!入って」


 お邦が愛想よく答える。さっきから、一人ぐらい良いだろうの客が五人もいる。


「ただ、座るとこないわよ!立ったままで良い?」


「構うこたねえよ。おら、いつも立って仕事してらー。左官が座ってたら、お棺にならあー」


「おい!いい加減にしろ!今日は目出度い結婚式だぞ!」


 客同士が大声でやり取りする。


「誰の結婚式だ?まさか、お邦ちゃんの結婚式じゃあるまいし」


 言い終わらぬうちに、げんこが横から飛んできた。


「痛てー!」


「ばか!そのお邦ちゃんだよ!」


 始めは静かに結婚式が行われていた。晋作とお邦、その両親、源太とおたふくの親爺、仲人役の十郎と千代の合計八人であった。いつの間にか客が六人加わり賑わっていた。


 お邦の母親は腕がすっかり治り、お酒や料理を運んでいる。


 父親の大工は晋作に、


「先生、お邦をよろしくお願いします」


 あの強情で強気の男が嬉しさと寂しさに涙ぐんでいる。


「おとっつあん、こちらこそよろしく」


 晋作はおとっつあんの手を、両手でしっかり握りしめた。いつの間に来たのか、お邦の母親も、


「先生、不束者のお邦ですが、どうぞよろしくお願いします」


 喜びと一抹の寂しさに声が震えていた。


「晋作、早く孫を作って喜ばしてやれ」


 十郎が湿りを打ち消すように言う。


「はい!」


 晋作があまりに元気よく言うものだから、


「過ぎたるは及ばざるがごとしと言う。程にしろよ」


 十郎はにっこり笑って、晋作の肩を叩く。


 晋作は酒で赤い顔をさらに赤くして、今度は小さな声で、


「はい」


 周りも聞いていたのか、どっと大笑いをした。そして、一斉に拍手が起きた。


 その騒ぎに、調理場にいたお邦が傍に来て、


「どうしたの?何かあったの?」


 それを聞いて、一同また大笑いする。


 千代は良くわからないが、合わせて小さく笑っていた。慎ましやかだが、澄んだ切れ長の目はきりっとして、上品な美しさがある。


その斜め横で、源太が千代をじっと見つめていた。


 おたふくでは、お邦の代わりが明日から来ることになっている。おたふくの親爺が口入れ屋に頼んである。


 お邦は今日から晋作の長屋に一緒に暮らす。正に身一つの嫁入りであった。


 慎之介は幸橋の坂江藩以外の日は殆ど綾乃と小太郎と一緒に夕食をするようになっていた。しかし、相変わらず泊まることはなかった。


 今日の小太郎は、元気がなかった。凧揚げはとっくに飽きて、また、べーごまに遊ぶようになっていた。ところが、今日は遊びたくないと言う。慎之介はもしやと思い、おでこに手を当ててみた。かなりの熱がある。


「綾乃さん、医者に連れて行って来る」


 綾乃は直ぐ駆け寄って来て、おでこに手を当てる。


「大変な熱!直ぐ冷やします」


 綾乃は手拭いを絞って来て、小太郎のおでこを冷やした。


「綾乃さん、手拭いをもう一本絞って来て下さい」


 慎之介はその手拭いを懐に差し込むと、小太郎をおぶった。


「綾乃さん家にいて下さい。おぶって行って来ます」


「私、一緒に行きます」


「いえ、家にいて下さい。任せて下さい」


 慎之介は小太郎をおぶると駆けだした。


 本所診療所は遠くなかった。五町ほどの距離だ。


 着くと患者は誰もいなかった。丁度帰り支度をしていたところだった。


 源太が直ぐ見てくれた。


「風邪ですね。熱冷ましと滋養薬を出しておきます。明日、また来て下さい」


「先生、ありがとうございました。おいくらですか?」


「薬代と合わせて五十文です」


「先生!随分安いようですが、お間違いでは?」


 そこへ十郎が入って来た。


「早水殿、いかがなされた?」


「おお、杉崎殿。ご病気か?」


「いや、ここは拙者の知り合いでして、ちょっと寄ってみました。お子様のようですが、いかがなされた?」


「先生、風邪です」


 源太が答えた。


「それはいかん、源太、この方は、私の恩人だよろしく頼む」


慎之介が治療代を払おうとすると、


「源太、貰ってはいかん。今後もよろしく頼むぞ」


「はい、わかりました」


「いや、それは困まる。それでは、今後病気になっても来れなくなる」


「ははは、早水殿は相変わらず固とうござる。わかりました。頂きなさい」


「杉崎殿、ご厚意ありがとうござった。では失礼致す」


 慎之介が小太郎をおぶろうとすると、


「あ、晋作、すまんが代わりにおぶってくれ」


「いや、杉崎殿、ご厚意はありがたいが、私がおぶりたいのだ。すまないがそうさせてくれ」


「わかった、余程のことだな、何も聞かん。気を付けて帰ってくれ」


 慎之介は歩きながら、おぶった小太郎に話しかける、


「気分はどうだ?苦しくないか?」


「うん、大分楽になったよ」


 長屋の入口に綾乃が立って待っていた。


「ありがとうございました」


 綾乃は涙ぐんでいた。


 慎之介は、用意された布団に小太郎を寝かすと、小太郎はしっかり慎之介の手を掴んで離さない。


「おじちゃん、帰っちゃいやだよ!おいらと一緒にいてよ」


「わかったよ、小太郎と一緒にいるよ」


「絶対だよ、帰っちゃだめだよ」


 小太郎は弱々しい声で言う。


 慎之介は、小太郎がかわいくてならない。そして、不憫でならない。今日は一緒にいようと思った。


                                   つづく

          35.幸せな朝

 日も暮れて、辺りはひんやりと秋の風が優しく通り抜ける。長屋はどこも行灯の灯がぼんやりと暖かそうだ。


 小太郎は慎之介の手を握ったまま、眠ってしまった。綾乃が額の手拭いを取り替えてもわからない。大分楽になったようだ。寝息すやすやと、穏やかな顔をして寝ている。


「慎之介様、ありがとうございました。慎之介様がいらっしゃらなかったらどうなったことやら・・・」


 綾乃は潤んで来た目に手を当てる。慎之介は、小太郎の頬に手を当てようと、小太郎の手をそっと外そうとする。寝ていたはずの小太郎の手がしっかり握り返す。慎之介は優しく笑った。嬉しかった。


 綾乃は気付いたらしく、


「お世話をおかけ致しました。本当に助かりました。ありがとうございました」


 慎之介は帰ろうとしたわけではない、綾乃の言葉が寂しかった。いつもなら


『それでは失礼致します』


 と帰るところだが、小太郎が気にかかる。


「今日は、傍にいてやりたいと思いますが、よろしいでしょうか?」


 綾乃はぱっと明るくなって、


「そうしていただけますと、小太郎がどんなにか喜ぶことでしょう。私も心強くいられます。どうぞよろしくお願いいたします」


 綾乃は自分の気持ちが素直に言えた。慎之介の言葉が嬉しく心強かった。そこには、母と女が同居していた。


 綾乃は枕元の手桶に手拭いを入れて絞り、小太郎の額の手拭いと取り換えた。


 暫く経ち、慎之介はもう一度、小太郎の掴んでいる手をそっと外す。今度は大丈夫だった。もう片方の手で、小太郎の頭をそっと撫でてやる。小太郎はすやすやと安心しきって寝ている。


 「慎之介様、こちらへどうぞ。お食事が出来ました」


 お膳には、おむすびと野菜の煮しめ、大根ときゅうりのぬか漬けにお茶。


「すみません、急ごしらえで何もございませんが、召し上がって下さい」


 忘れていたが、腹が空いていた。


「綾乃さんは?一緒に食べましょう」


「はい、私は後でいただきます」


 慎之介は、おむすびを三つ食べた。うまかった。その間、綾乃は小太郎の額の手拭いを変えた。


「慎之介様、熱がひいたようです」


「どれどれ、あ、これは良かった。熱が引いたようだ」


「慎之介様、ありがとうございました。おかげさまでございます」


 綾乃は立ち上がり、枕を持って来た。


「お疲れになられたでしょう。少しお休み下さい」


 慎之介は小太郎の熱が下がったので、ほっとした。


「それでは少し横になります」


 小太郎の横に枕をして横向きに寝た。その上に綾乃が着物をそっと掛けてくれた。甘いような綾乃の匂いがした。


 いつの間にか寝てしまった。ふと目が覚めると、細目にした行灯の灯りの中に、綾乃が座ったままで、首をかしげて眠っている。


 慎之介は、自分にかけてあった綾乃の着物を、肩からそっと掛けてやる。


「ありがとうございます。大丈夫です」


 綾乃は目を開けた。夜が更けると、寒いくらいだ。


「綾乃さん、あなたが風邪を引いたらどうする。布団を敷いて寝て下さい。私が起きていますから、小太郎のことは心配ありません」


「いいえ、私は大丈夫です。慎之介様こそお休み下さい」


 慎之介は、立ち上がると隅にあるもう一組の布団を敷き始めた。


「私が致します」


 綾乃は慎之介が敷き始めた布団を、代わって敷いた。部屋が狭いので、小太郎の直ぐ隣に敷いた。


「慎之介様、どうぞお休み下さいませ」


「いえ、私は小太郎の向こう側に寝ます」


「それでは、冷えて来ましたので慎之介様が風邪を引かれます。私はここに寝るわけには参りません」


「それではここに一緒に寝ましょう」


「はい、わかりました」


 綾乃は少し小さな声で恥ずかしそうに返事をした。


 綾乃は、こんな思い切った返事をするとは、自分が信じられなかった。慎之介も自分が言った言葉に驚いている。


 慎之介は小太郎の直ぐ隣側に寝た。


「綾乃さん寒いから入って下さい」


 さすがに二人とも普段着のままである。寝巻には着替えていない。


 綾乃は後ろ向きに控えめに入って来た。


 二人は互いに後ろ向きに、背中合わせであった。しかし、二人の息遣いは、互いに良く聞こえた。


「おじちゃん、おはようございます」


 小太郎が手を引っ張る。お味噌汁の良い匂いが漂って来る。


「小太郎、具合はどうだ?」


「すっかり治ったみたいだよ。おいら、着替えて顔洗って来たんだよ」


と嬉しそうに元気に言う。


 昨夜、慎之介は自分の心臓の鼓動が、綾乃に聞こえたらどうしようと、両の手でしっかり押さえているうちに、眠ってしまったようだ。


「慎之介様、おはようございます。おかげさまで、小太郎はすっかり良くなりました。ありがとうございました」


 綾乃が両手をついてお礼を言う。そして、


「もう直ぐ朝ごはんですよ。お顔を洗って来て下さい」


 にっこり笑って手拭いを渡された。


 慎之介は幸せな気分に満ちた。こんな朝が欲しかったのだ。


                  つづく

     36.心に朝陽

 慎之介はいつもより少し早く但馬屋を出た。小太郎が気になる。今朝は元気そうに綾乃と送り出してくれたが、昨日の夕刻は大変な熱であった。それを思うと、今朝のことは本当であったかと心配でならない。昼八つ半、小太郎の長屋へ向かった。


 入口で声をかけると、


「おじちゃんが来た!母上おじちゃんが来たよ」


 と小太郎の弾んだ声。


 開けるより先に戸が開いた。小太郎が急ぎ来て開けたようだ。


「おじちゃん、待ってたよ。おいら朝からずーっと待ってたんだよ」


 綾乃がその横で、


「昨日はありがとうございました。おかげさまで小太郎は元気になりました。どうぞ、お上がり下さい」


 もう、慎之介は小太郎に手を引っ張られている。


「おじちゃん、早く上がってよ。おいら、漢字を覚えていたんだ。ほら見て」


 見ると、小机が出され、その上に何度も重ね書きしたとみえ、半紙はほぼ黒く埋まっていた。黒くて何を書いていたのかわからないが、一生懸命練習していたのはわかる。


「偉いな、凄いじゃないか、真黒になるまで練習したんだな」


「いろはは全部書けるよ、今、漢字を覚えているんだ」


「小太郎と漢字で書けるか?」


「そんなのとっくだよ。書いて見せるよ」


 小太郎は端の少し空いた所に、小太郎と書いて見せた。なかなかしっかりした大きな字を書いた。


「良いね、おじさんよりうまいかも」


 と言いながら、小太郎の額に手を当てる。熱は無い。良かった。


「どうだ、具合の悪いところはないか?」


「さっきも言っただろう。治ったって。どこも悪くないよ」


 少し覇気がないようだが、高熱の後だから仕方がないのかも。しかし、少し声がかすれている。


「小太郎、先生にもう一度見てもらおう」


「治ったよ、もう平気だよ」


 慎之介は、少しかすれた声が気になる。


「じゃ、昨日のお礼を言いに行こう。さあ、おじさんも一緒に行くよ」


「わかったよ、おじちゃんはしつこいんだから」


「綾乃さん、ちょっと診療所へ行ってきます」


 二人は楽しそうに出て行った。遊びに行くみたいだ。


 綾乃はその二人の後ろ姿を嬉しそうに見送った。


 診療所は中に入ると、患者が五人椅子に腰かけて診療を待っていた。その後ろに並び、先ずは、昨日のお礼をと診療中の源太に声をかける。


「先生、昨日はありがとう」


 源太は振り返ると、


「お子さんの様子はいかがですか?」


「はい、おかげさまで熱が下がりまして、元気になりました。ただ、少し声がかすれているようで、診ていただこうと連れて来ました」


「わかりました。少し待ってて下さい」


 源太も晋作も患者に分け隔てなく、丁寧に診察する。しかし、堅苦しくない。時々患者が声をあげて笑う。口の悪い婆さんが、


「先生、お嫁さんお世話しましょうか?晋作先生のお嫁さん、目の毒と違います?」


 忙しい時、お邦が時々晋作を手伝いに来る。それを見ているのだろう。


「婆さん心配ないよ。源太先生は良い人がいるんだよ」


 源太はにこりともせず、


「晋作先生、婆さんの薬は唐辛子をたっぷり混ぜといてくれ」


 四半刻程で小太郎の番になった。


「流行り風邪だから、二三日は安静が良いのですが、子供ですからそうもいかないでしょう。出来るだけということで気を付けて上げて下さい。声のかすれは、喉の炎症ですから、風邪薬と一緒に薬を出して置きます」


 晋作に薬を指示する。作り置きがあるとみえて、晋作がすぐに出してくれた。


「食事の後飲ませて下さい。睡眠作用がありますから、ぐっすり眠れますよ。それからこれは煎じた喉の薬です。三倍に水で薄めて、朝昼晩にうがいして下さい。喉もこれで大丈夫と思いますが、何か変わったことがあったらお連れ下さい」


「これはかたじけない。ありがとう。おいくらですか?」


 晋作は源太の方を向く、


「昨日いただいておりますので結構です。どうぞお大事下さい」


 源太がにっこり言う。慎之助は一瞬困った顔になったが、心得て、


「先生、ありがとう。十郎殿にもよろしくお伝えください。それでは失礼致す」


「ただいま」


 小太郎が元気よく引き戸を開ける。


「お帰りなさい。慎之介様、先生は何とおっしゃいましたか?」


「大丈夫だそうです。ただ、まだ安静が必要だと言っていました。だから、よく眠れる薬も入っているそうです。喉はうがい薬をいただいて来ました。三倍に薄めて朝昼晩行って下さいとのことです」


「ありがとうございます。すみませんでした。お代はおいくらだったでしょうか?」


「あ、それ心配ありません。知り合いの診療所ですから、無料です。ご心配なく」


「それでは・・・」


「いや、綾乃さんも知っていると思いますよ。本所で私たちがばったり会って、立ち話をしていた時に、途中から入って来た男。十郎殿です」


「よろしいのでしょうか?」


「良いのです。そういう仲ですから」


 夕食が済むと、小太郎が慎之介の膝の上にちょこんと座る。


「おじちゃん、おいらまだ病気だから泊まってよね」


 小太郎は慎之介の右手を両手でぎゅっと握る。綾乃を見ると急に下を向いた。


「小太郎わかった、今日も泊まって行くよ。綾乃さんよろしくお願いします」


「はい」


 と小さく嬉しそうに答えた。


 小太郎は薬が効いたのか、膝の上で眠ってしまった。


「綾乃さん、小太郎の布団お願いします」


 小太郎を寝かすと、二人は無口になった。


 相向かいにお茶を飲む。二人には話すことがいっぱいあるはずなのに、黙ってお茶を飲む。綾乃は堪らなくなって、


「お疲れになったでしょう。お布団敷きますね」


「あ、お願いします」


 慎之介は今気づいたように言う。


 綾乃は昨日と同じように、小太郎の横に並べて敷いた。


「お着替えの浴衣です。お召し下さい」


「綾乃さん、また、半分ずつにして寝ましょう」


 慎之介は明るく振舞ったが、声は少し震えていた。


 慎之介が布団に入ってから、暫くして綾乃が後ろ向きにそっと入って来た。今日は着物を脱いで長襦袢姿である。綾乃の甘い匂いがふわっと布団の中に広がった。


 二人は背中合わせのまま、お互いの息づかいを聞いた。慎之助はせつなくなって、向きを変え、綾乃を力の限り背中から抱きしめた。綾乃は息が詰まりそうだった。それでもじっとしていた。慎之助はそのせつない自分の気持ちを、どうしていいのかわからなかった。そのまま綾乃の口を吸った。綾乃も応じた。綾乃は身を切るほどせつなかった。


 いつの間にか二人は一つになった。綾乃は嬉しくて涙が溢れた。二人の心に朝陽が差した。


                      つづく

次回37回10月17日月曜日です。